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いくら軽くとも成人男性一人を抱え、自室のある7階まで辿り着くにはかなりの体力を使った。

鍵を開けてドアを押さえつつ、南沢の体を引きずり入れる。
引きずった拍子に南沢のズボンがずるっと足首までずり落ちてしまった。


「うわ…やべっ!」


誰かに見られたら恐ろしいことになる。

深夜に半裸の男を部屋に引きずり込む男…確実に変態としての不名誉な称号が与えられるだろう。

とにかく南沢を上がり間まで引きずり、ドアを閉めて後ろ手に鍵をした。


「はぁ…」


息をついて視線を上げれば、下半身丸出しの南沢が居た。
うっと息を詰める。


「とにかく、ズボンを…」


呟いてしゃがみ込んでから、気付いた。
下着を付けていない。
いや、それだけなら趣味として目を瞑っていただろう。

問題は足の間に筋を描いた液体だ。
酔っ払って漏らす迷惑な人間も居るが、それも違う。

ほっそりとした腿を幾筋かの、白濁液が伝っていた。


「……南沢、」


腫れた頬や切れた唇。
わからないわけがない。

しかし答える相手は相変わらず気を失ったままだった。
悟史は口を噤むと、ボタンの壊れたズボンを履き直させ、それから南沢を自分のベッドに寝かせた。

布団の中で静かに眠る南沢は寝息も聞こえないほどで、しばらくはそのまま死んでいるんじゃと気が気ではなかった。

何度も口に手を翳す。
そのたびに南沢は、小さく息を吐いていた。




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