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10

茉穂はポーチを拾って熊谷に突き出す。
受け取った熊谷は中を確認して、また茉穂の方を見た。


「貯金か。こいつで逃げるつもりでもいたか?」

「それで全部だよ。そっくり返すから、もう…」


言い終わらないうちに茉穂が悲鳴をあげた。皿が何かが割れる音も重なる。
熊谷が殴ったのだろう、直は見ていなかった。


「返すか返さないかなんてよ、どうでもいいんだよッ!したことの落とし前つけるつもりでいたんだろうな、このアマッ」

「やめてよっ痛い!」

「あァ!?てめぇな、これ以上ナマやってっと沈めんぞ。わかってんだよなァ?ん?どうなんだよッ」

「ごめ…なさ、…わかったから、やめてぇ…!」


あとはもう、茉穂の泣き声と悲鳴しか聞こえなかった。
ふいにその中に喘ぎ声が混じり、直はまた母親が目の前で犯されていることを知った。

しかしその声が先ほどの自分の声とよく似ていることに、しばらくしてから気付く。熊谷が言っていた通りだった。

喉の奥が熱くなり、折り重なる二人の脇を走ってトイレに駆け込む。
ほとんど胃液しかない吐瀉物に、惨めな気分が増した。

そのままシャワーの栓を捻った。
冷たい水を頭から被る。
同じ男に犯される母親と自分はいったい何なんだろうと、嫌悪感が溢れてきた。




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あきゅろす。
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