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獣王国
蒼穹
高い空を見上げる鳥が1羽

その目に映るのは憧れか、悲しみか

自分と対峙する時はいつも眉間にしわが寄っている

だからこんな表情もいいなと思ってしまう

(でも、どうせなら…)

笑ってほしい

そんな風に思うようになったのは、いつだったか

足音と気配を消して、背後からそっと近付く
真後ろで姿勢を低くし、気付かれる前に行動を起こす

「うわぁっ!!」

自分の肩に座らせるようにし、さっと立ち上がれば慌てて頭にしがみついてくる
つまりは肩車だな

「バ、バカ猫!?」

ようやく自分がしがみついた物の正体が分かったらしく、驚きの声を上げる

「相変わらず軽いなぁ」
「貴様が重すぎるんだ!」
「ちょ!ヒトを肥満のように!!」

まだまだ成長中の俺としては、ちょっと傷付いた
筋肉は重いんだ!

「キレーな空だな」
「…そうだな」

いつもより少しだけ、元気のない声

「でも、どうしてかな?空が綺麗だと思うようになったのは…」
「…なったのは?」

途切れた言葉を促せば、少しだけ腕に力が入る

「…飛べなくなってからなんだ」

少し分かる気がした
手に入る物は、それがすばらしいものであっても『当たり前』になってしまう

「手に入らないからこそ、その価値を感じられるんだな」
「なるほどな…飛べた頃は、確かに当たり前のものだったよ」

しばらく無言で空を眺めていたが、急にオオワシが鬣を引っ張ってきた

「イテ!痛いってオオワシッ!」
「うるさいバカ猫!いいかげん下ろせ!」

そうは言う物の、いつもの刺々しさは消えている
それならもう少し、時間を共有したい

「たまにはいいじゃねーか!もう少し同じ景色を見てよーぜ」
「…同じ、景色…」

呟きとともに手が止まる
鬣抜けてねーよな……
うわっ!撫でられた!(乱れた鬣を直してるみたいだ)
改めて頭に手を置かれ、少し弾んだ声が聞こえてきた

「しょーがないな!た、たまにはつき合ってやる!」
「おう!」

笑顔が見えないのは残念だけど、今笑ってるならそれでいい

どこまでも広がる青空の下、俺はゆっくりと歩き出した………



『同じ景色を見てよーぜ』

バカ猫から与えられた言葉
同じ景色を見られるのなら、翼なんていらない

飛べなくて良かったと、初めて思った




あとがき

もちさんのライワシ肩車絵を見て、みなぎった結果がコレだよ
お前らもっとイチャつけ!

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