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  初恋物語(完結) 〜貴方と過ごした季節〜
貴方と過ごした季節(最終話)


花音の体は、拒否反応を起こしていて全身が震えていた。



「やっぱり……無理だよ……たっちゃんの事……嫌いじゃないのに…」



「花音……?」




「ごめんね……?こん……なに泣いて…震えてる子なんて……魅力ない……よね…?本当に…ごめんね…」



龍宏の腕の中で泣き崩れた花音の全身から伝わる気持ちに、心を痛めた龍宏。



やっぱり…俺のために我慢して抱かれようとしてたんだ…



花音……



ありがとう…



心の中で何度も感謝した龍宏。



二人が抱き締め合ったまま、一体どれくらいの時間が流れただろうか…?



すると、花音の顔を覗き込むように龍宏は、静かに問いかける。



「彼氏がいてもいい…今…キスだけ…してもいい?俺じゃ嫌…かな…?」



「嫌じゃないよ…今だけなら…一度だけなら…キスしても…いいよ…?」



そう言うと花音は龍宏と唇を重ねてもいいと心に決めた。



花音は龍宏の首に手を回して、軽く目を閉じると、唇を差し出した。



龍宏はしばらく花音を見つめて戸惑う表情を見せたが、目を閉じて花音の唇を奪った。



「チュッ…♪」



花音は、亮太のキスとの違いに心が揺れ動いた。

亮太とは何度もキスをしているので、お互いが慣れてしまっているため、エッチの前の挨拶のようなキス。



一方…龍宏のキスは、切ない気持ちの中に、感謝の気持ちがあるように優しく、龍宏が花音の事を求めているかのように錯覚してしまう愛情の溢れたキスだった。



キスは愛する気持ちが伝わるという。



だから愛のないキスはしないが、男に抱かれる事には、抵抗のない女が増えているという現実があるのかもしれない。




今なら…


たっちゃんと…結ばれてもいい…


やっぱり…


たっちゃんの事が…


好きだよ…




軽く触れあうだけのキスだったが、花音の心は龍宏に向かっていた。



そんな花音の気持ちが伝わったのか、龍宏が花音を強く抱き締めて、耳元で囁いた。



「ありがとう…俺が地元の高校に行ってたら…花音が告白してくれた時に………」



「えっ……?」



花音は、唖然とした表情で部屋の壁を見つめていた。



「付き合ってた……子供の頃から…ずっと好きだったよ……?」



「私も…」



私も龍宏が好きだと伝えようとした花音の言葉を書き消すように、龍宏は言葉を重ねた。


「俺……プロの世界に行っても頑張るから……さようなら……花音…」



涙を流した龍宏が、花音に涙を見せないように顔を伏せたまま、もう戻る事の出来ない過去に後悔して、花音の部屋から出ていった。



「たっちゃん……さよならなんて嫌だよ……嫌だよ……」



ベッドに泣き崩れた花音。



自分から花音の告白を断った龍宏に、亮太と花音の仲を切り裂く事など出来ない。



今日、花音の家に来たのは、慰めて欲しかった事と、自分へのケジメをつけるためだった。









10年後……



アナウンサー「ニュースの時間です。
今日、読神ジャガーズのタツヒロ選手が結婚を発表しました。
28歳の会社員の花音夫人です。
おめでとうございます」



あの後…花音は自分の気持ちを抑えられずに、亮太に別れを切り出して、龍宏の元へと駆けつけた。



「彼氏と別れてきた…私は…たっちゃんが好き……」



こんな花音の告白を受け入れた龍宏と、二人は付き合う事になり、めでたくゴールインする事となった。



二人の大切な高校3年の夏という季節は、切ない思い出となり…



これからの二人は、四季折々に、たくさんの幸せな思い出が、作られていく事だろう。







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あきゅろす。
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