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  初恋物語(完結) 〜貴方と過ごした季節〜
甲子園の帰り道…



試合が終わって…



花音が亮太に家まで送ってもらう途中で、龍宏の家の前を通り過ぎると、いつもは消えている龍宏の部屋に灯りがついていた。



小学生の頃は、よく通っていた龍宏の部屋。

龍宏は覚えていないかもしれないが、花音のファーストキスをしたのもその部屋だった。


幼稚園に通っていた頃に……


おてんばだった花音が龍宏と玩具の取り合いで負けて泣いていた。



「花音にも貸してよぉ!貸・し・て〜!」



困惑した表情の龍宏が花音に玩具を渡して言った。



「もう少し女らしくしろって…顔は可愛いんだからさ…」



「う…うん…」



涙を拭いて、照れ臭そうに龍宏を見上げる花音。



龍宏も花音の女の子らしく照れる姿を見て、可愛いと思っていた。


玩具を渡してもらって泣き止んだ訳ではなく、可愛いという言葉に反応したのだ。



いつもなら、女らしくないと言われると反論して喧嘩に発展していたが、龍宏の可愛いという言葉に、幼ながら胸がときめいていた。


そんな花音の気持ちを見透かしたように、龍宏が唇に軽くキスをしたのだ。




「えっ…もうっ!やだぁ!たっちゃん!」



そう言って慌てた花音が、龍宏の体を何度も叩いてたが、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分でどう反応していいのかわからなかった。



龍宏も幼稚園児なので、好きな人じゃないとキスしてはいけない。なんて親の言葉を鵜呑みにしていたので、花音を好きだという気持ちはあった。



そんな事があった事を思い出しながら、灯りのついた龍宏の部屋を眺める。



(夏休みだから、たっちゃんは、家に帰ってるんだ…今日は辛かったんだろうな…)



亮太と手を繋いで歩いているのに、龍宏の事ばかり考えてしまう。




そんな時、亮太が花音を見つめて言う。



「うちの学校が優勝した祝いに…」



「んんっ…」


亮太は夜道の真ん中で花音をいきなり抱き締めてキスをしてきたのだ。



今までに何度も味わった亮太の唇が、優しく花音の唇に重なり合う。



何が祝いなんだか…?と戸惑いながらも、ゆっくりと亮太の背中に手を回して抱き合い、唇を受け入れる花音。


約一年の間、大切にしてくれて、自分を守ってきてくれた亮太を裏切っているような罪悪感で胸が苦しくなる。


しかし亮太への気持ちがないわけではない。


亮太の事は大好きなままである。



そんな花音がそっと唇を離して目を開けて、亮太のキスに酔いしれた表情で見つめる。


「亮ちゃん…大好きだよ…」



花音の少女と大人の間のような色っぽい表情に愛しくなり強く抱き締めた。


「俺もだよ…花音…」


この時の花音は、自分が好きなのは亮太で、龍宏は憧れのままでいようと思っていた。




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