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  初恋物語(完結) 〜貴方と過ごした季節〜
高校野球決勝

炎天下の夏の高校野球の決勝戦を見に来ていた女子校に通う花音(かのん)は高校3年になる。



その花音の隣に座っている彼は亮太(りょうた)が付き合って1年になる同じ歳の彼。



亮太の通う高校は、花音が通う女子校の近くにあり、亮太の学校という事で野球部の応援に連れて来られた。



普段の花音なら野球に全く興味がないのだが、今回は違う。


今、マウンドに上がったピッチャーが、亮太の高校の対戦相手の野球部で、キャプテンでエースをしているの龍宏(たつひろ)。



花音と龍宏は幼なじみで、中学3年のバレンタインデーに花音が龍宏に思い切って告白したが、答えはNOだった。



龍宏の理由は、通う予定の高校が違う事と、幼なじみだから恋人とは思えないという2点を花音に告げた。



その後、龍宏は野球推薦で他の地域の名門校に入学して、寮生活を送る事になる。


高校に入学してしばらくは、花音とメールのやりとりをしていたのだが、今では連絡もほとんどしていない。



それから約2年半が過ぎ、現在に至る。



花音はマウンドにいる龍宏を内野席から眺めていると、隣に彼氏がいるというのに、どうしても心がときめいてしまう。



(たっちゃんは…甲子園で優勝するのが夢だったもんね…?亮ちゃんには悪いけど…頑張ってね!)



花音は、龍宏の対戦相手側の応援席にいるため、表だって口にはしないが、龍宏を心から応援していた。



龍宏は好投を続けて9回裏まで、1ー0で勝っていた。



「ふぅ…あと…3人か…?」



炎天下のマウンドで汗を拭った龍宏は、指先が痺れるほど体力を消耗していたのだ。




先頭打者の四球からリズムを崩して2アウト満塁。



花音の周りの応援団や亮太も一打サヨナラの場面で、最高に盛り上がりを見せる。


「サヨナラ!サヨナラ!」



応援団の大合唱の中で、花音は胸の前で手を握って願っていた。



(たっちゃんに勝たせてあげてください…)


カキーン♪



金属バットの音がグランドに響いた打球の行方は、ピッチャーゴロ。



龍宏が一塁に投げれば、試合終了で高校野球の頂点に立てる。



そう思ってガッツポーズをした龍宏が、一塁に投げたボールが、とんでもない所に投げてしまった。


顔面蒼白で痺れる指先を一瞬眺めて、マウンドに泣き崩れる龍宏。



試合は……



亮太の高校のサヨナラ勝ちで終わった。



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あきゅろす。
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