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スタリオ 新
旅路・5

ハイデルベルグ城までは割とすんなりと行けた。

ウッドロウさんとチェルシーが後方から弓で攻撃するのが敵の不意をつくようだ。

だけど慣れない雪道で消耗が激しく、城の地下の休憩所で休むことに。


「ここを出て階段を上って行けば、すぐに時計台につく。焦らずにしっかりと休んでくれたまえ」

ウッドロウさんの臣下だという人に温かい飲み物ももらい、緊張していた空気も和らいだようだ。

「そういえばルーティさんから聞いたんですけど、リオンさんってスタンさんと付き合ってるんですよね?」

チェルシーのいきなりの質問に、リオンは噎せ、ルーティを睨みつける。

「どうしてパーティに新しいメンバーが入る度に説明しなきゃいけないんだ!」
「いいじゃん、リオン。俺は、世界中に知らせたいくらいだよ。リオンを愛してるって」
「す、スタンッ!」

リオンの手を取り、指に口付けながら言えば、チェルシーはうっとりとしていた。

「私もいつかウッドロウ様にそんなこと言われてみたいです〜」

キラキラした目で見つめられ、ウッドロウさんは苦笑している。
チェルシーは可愛いけど、歳の差が問題だよな……。

「あー、ゴホン。皆、そろそろ出発してもいいだろうか?」

ウッドロウさんは誤魔化すように言ったけど、頬が微かに染まっていた。
満更でもなさげ、かな。

「頑張れよ、チェルシー」
「はい!」

チェルシーも気づいていたらしく、嬉しそうに返事をした。





休憩所を出て階段を上って行くと、反乱軍だった人たちがグレバムの手下を倒している。

なんでも、ジェノスにウッドロウさんが逃げてきたときに、この騒動が落ち着いたらダリスさんと話し合うことを条件に国のために戦うと約束したらしい。

武力で解決するのは愚かだと悟ったのだろう。

とにかく彼らのおかげで敵の数は大分減っていて、時計台まではすぐだった。



「やっと来たか、小童どもが」

巨大なレンズを前に瞳をギラギラと光らせている男……グレバムがいた。

「神の眼とこのソーディアンがあれば、何も怖いものなどないわ!」
「イクティノス…!」

グレバムは銀の長剣を掲げて高笑いしている。

「……リオン、グレバムじゃなくて神の眼を攻撃するんだ。あいつは神の眼の力をイクティノスに送ってムリヤリ使ってるから、更に力を上乗せすればオーバーヒートして使えなくなるかも。…イクティノスも少し壊れるかも知れないけど、クレメンテの知恵があれば多分直せる」
「…分かった」

リオンに耳打ちで伝えれば、リオンはシャルティエを構えて詠唱を始めた。

「……デモンズランス!」

晶術が神の眼に当たると、イクティノスのコアクリスタルから小さく火花が出る。

それを見てルーティもフィリアも理解したのか、次々と詠唱を始めた。

「ふはは、どこを狙っておる!」

グレバムが攻撃してきそうになれば、ウッドロウさんとチェルシーが矢を放ってそれを阻止する。

「ライトニング!」
「アイストルネード!」
「ファイアストーム!」

晶術を当てていくと、イクティノスのコアクリスタルが光を放ち、それ以降機能を停止させた。

そしてリオンがイクティノスを弾き、こちら側に飛ばす。

「さあ、これでお前の武器はない。観念するんだな」
「……所詮は私もただの駒…だったのだ…」

イクティノスがなくなっただけで随分意気消沈したようだ。

「リオン・マグナスにスタン・エルロン……自らもただの駒だと知らぬ者は楽だな」
「うるさいよ」

俺はディムロスでグレバムの腹を刺した。

「スタン!?」
「大きな力を手に入れて調子に乗っただけのお前と一緒にするな」
「ぐ…ぁ」

俺の後ろでみんなが黙り込んでいる。

「…帰ろう。これで任務は終わったんだ」

グレバムが奪った飛行竜も取り戻し、セインガルドに向かった。



内部の部屋で報告書を書いていると、控えめなノックが響く。

「リオン?…入って」
「よく分かったな」

リオンは小さく笑うとベッドに腰掛けた。
俺もリオンの隣に座る。

「リオンのノックは昔からずっと聞いてるしね。よく、寝れないって言って俺の部屋に来たっけ」
「…昔の話だ!」
「今は俺の方がリオンの部屋に夜這い…」
「黙れ!」

顔を真っ赤にして腕を振り上げたリオンは、ふっと力を抜いて俺に寄りかかった。

「良かった、いつものスタンだ。さっきのスタン…なんだか怖かったから……」
「びっくりさせちゃったね。…ごめんな」

リオンの頬を両手で包んで上向かせる。
こつんと額を合わせれば、リオンは柔らかく微笑んだ。

「…あんな俺は嫌い?」
「ううん…怖かったけど……ちょっとかっこよかった、かも…」
「なんだよ、ちょっととか、かもとか」

拗ねたように唇を尖らせると、リオンはすっかり安心して肩の力を抜いた。

「ね、スタン…キスして」
「そういえば全然恋人らしいことしてなかったね」

リオンの目が閉じられたのを合図に、唇をそっと触れ合わせる。

啄むようにしてから、薄く開かれた唇に舌を入れた。

「ん、んぅ…」

久しぶりだからかリオンはぎこちなく、それがなんだか可愛かった。

「リオン」

唇を離して話しかければ、リオンはぼんやりと「…ん?」と言う。

「もし俺が困ってたら…リオンは…」
「僕は、スタンのためならなんでもする。だから、困ったことがあったら言って……ね?」

小首を傾げるリオンが愛しく、俺はリオンを力いっぱい抱きしめた。

「ありがとう…ありがとう、リオン」
「…スタン」

心底幸せだ、という表情でリオンは俺に身を預ける。





ダリルシェイドに着いたのは、それから暫く経ってからだった。



END


*微妙にウドチェルぷっしゅ。
やっと話が進む…!

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あきゅろす。
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