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戦う女
8 [side土方]


「どう思う?」





俺は部屋に残った近藤さん、山南さん、斎藤、総司に話を振った。





「俺は局長と同じ意見です。あの者は奴らを目撃したことを、覚えているようには見えません」





斎藤が静かに言った。

たしかにあの女は嘘をついているようには見えなかった。

何かただならぬ雰囲気を纏ってはいたが。






「僕もこの間の件については大丈夫だと思うな。
…で、どうするんです?あの子」





その言葉に、俺は深いため息をついた。


あの女…宮尾和葉が、ここで治療代分働かせてくれと言ってきたのだ。





――『内科の診察と薬代となればかなり高いでしょう?金銭的な問題はしっかり片をつけておきたいんです。お願いします』と。






たしかに金はかなりかかった。

お上の民の為だ、という近藤さんの言葉に仕方なく従ったが…。





また面倒事が増えたことに、疲労感を隠せずにいた。







「仕事に人手が足りないのは事実です。ここは彼女の言う通り手伝ってもらってはどうでしょう?」





山南さんが口を開く。





「うん。俺もそれでいいと思うぞ」





近藤さんが笑って言う。





(…どうもこの人のこの顔には敵わねぇな…)





「…わかったよ…あんたがいいなら俺はそれでいい」




俺がそう言って、その場は解散になった。








朝餉(朝食)のあと、俺は宮尾が持っていた荷物と刀を持って、宮尾のいる部屋へ向かった。






「俺だ。入るぞ」





「あ、はい」





宮尾は薬を飲んでいたようで、俺が入ると包み紙と湯呑みをいそいそと片付けた。


俺は宮尾と向き合って座り、宮尾に荷物を手渡した。






「ひとまずこれは返しておく。
それで例の件だが、お前にはここで十日ほど、幹部の雑用をやってもらう。
だが…お前は新選組の者じゃねぇ。隊士共にはなるべく見られないようにしろ。いいな」





「はい、わかりました。…よろしくお願い致します」





宮尾は荷物を置いて丁寧に頭を下げた。






「…ああ。部屋はここを使え。隣は千鶴の部屋だ。
…それから、ここにいる間は男装を続け、刀もつねに持ち歩いてろ」






そう言って宮尾に大小二本の刀を返した。


斎藤に言わせればこの刀はかなりいいものなんだそうだが。






「わかりました」






そう言った宮尾を見て、俺はさっきの宮尾の言葉を思い出した。






「…?どうかしましたか?」






「…ここを出たらどうするつもりなんだ?またふらふら歩いて暮らしていくのか?」





宮尾は一瞬言葉に詰まったが、





「そうですね…まあ、そうなりますかね」





と、微笑を浮かべて返事した。




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