戦う女 6 [side和葉] (…何者だ?こいつら) 強い。 直感的にそう思った。 しかも、何となく異質な感じがする。 「和葉…どうして…」 「…何となく嫌な感じがしたから来てみたんだけど… …何者だ、貴様ら」 千鶴が小太刀に手をかけていたから思わず飛び出したが、状況がいまいち飲み込めない。 こいつらは何者で、何故千鶴を狙っているのか。 どうやってここに忍び込んだのか。 「…ふん、新選組の者か。 相手の正体も分からぬまま斬りつけるとは…田舎の犬らしい、随分と野蛮な真似をする」 「質問に答えろ。貴様らは何者だと聞いてるんだ」 余裕の笑みを浮かべる相手を、鋭く睨みつける。 「そこまで気になるのなら、力づくで聞き出してみたらどうだ? もっとも無理だと思うが」 ここで斬りかかるほど、私も馬鹿ではない。 相手は三人だし、 直感だが、そこらへんのごろつきとは格が違うだろう。 認めるのも癪だが、私一人ではどうにもならない。 「どうした?怖じけづいたか?」 「……」 (…どうする……) 千鶴に助けを呼んでもらおうにも、相手が三人じゃ危険すぎる。 何とか時間を稼がないと、と思った次の瞬間、 ……目の前の男が消え、ザッ…と背後で音がした。 「!?」 後ろを向いた瞬間、目の前に迫った白刃。 ――ガキイィィン!! 「っ!!」 「ほう、見えたか」 「和葉!!」と、男の後ろで千鶴が叫んだ。 (っ…じょ…冗談だろこいつ…) 今、男が片手で軽々と振り下ろした剣を、私は体を張ってやっと止めている。 しかも何だ、今の動きは。 「…っ何者だお前…ほんとに人間か!?」 この圧倒的な力の差と、絶望感にも似た感覚は、まるで羅刹と対峙した時のそれだ。 いや、あの時よりも―― 「人間か、だと? …俺が人間に見えるか?」 「何だと…!?」 (じゃあこいつ――…) 「……羅刹…?」 思わず小さく呟いてしまった。 途端に、男は不機嫌そうに目を細めた。 「あのようなまがい物と一緒にするな。 反吐が出るっ!」 「!!ぐっ…」 離れようにも離れられず、押し返すことも出来ず、私は押されっぱなしになる。 「貴様のようなガキが俺の相手など…百年早いわ」 「うっ…るさい…!!」 何とか離れ、再び斬りかかる。 鍔ぜりにならないように気をつけながら、技を連続して出す。 「無駄だ。貴様の太刀筋など手に取るように分かる」 「っ…それは…」 私は一度足を止める。 反射的に男は斬りつけてくる。 瞬間、私は小太刀を抜いてそれを止めた。 「!」 「どうかな」 そのまま大太刀を男の懐めがけてぶち込む。 が… ――カッ!! と、鞘で受け止められた。 すぐさま私は小太刀を手放し、次の攻撃に転じようとするが…… 一瞬、男のむこうで、もう一人の男に銃を突き付けられた千鶴が目に入った。 「!!千「どこを見ている」 我に返った時には、もう遅かった。 「うぐっ!!」 私は男の蹴りをもろに食らい、後ろの塀に叩きつけられた。 最悪なことに先日壁にぶつけた所と同じ所を強打し、視界が眩み、私はその場に片膝をつく。 「終いだな」 「…!!」 振り下ろされる刀を受け止めるべく足を踏み出したところで……… ―――キイィィィン!! 「おいおい、こんな色気のねぇ場所、逢い引きにしちゃ趣味が悪いぜ」 私の前には斎藤さん、千鶴の前には原田さんが背を向けて立っていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |