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戦う女
5 [side千鶴]


今回の私の仕事は、伝令だ。

土方さんから出た指示を、みんなに回すこと。





「次の交代は亥の刻になります!
三番組の方々は中庭に回って下さい!」





私はそう言いながら、和葉を見付けて手を振る。


そのまま門をくぐったところで、不意に足がぐらついた。



「っわ!」





見れば、草履の紐が解けていた。
それを結び直しながら、近藤さんは今頃偉い方々に謁見してるのかな、などと考える。





「私も頑張らなくちゃ」





近藤さんが、私も新選組の一員だと言ってくれて、とても嬉しかった。
連れてきてもらったからには、ちゃんとそれに見合った働きをしなければ。



そう思い、再び走ろうとした瞬間…
不意に周りの空気が冷たくなったような、嫌な感じがした。





(この…感じは……)





この感覚は身に覚えがある。

気配をたどって上を見上げると…





「!!あなた達は…!」





障壁の上に、人が立っていた。

見覚えがある。池田屋と禁門の変の時にいた人達だ。





「気付いたか。さほど鈍いという訳でもないようだな」




「なっ…なんでここに…どうやって…!?」





ここは今完全な警備下におかれ、人が入れるような場所ではない。

けど、その人達の中の一人はこう言ったのだ。





「あぁ?俺ら鬼には、人間の作る障害なんざ意味をなさねぇんだよ」





「お…鬼!?からかっているんですか!?」




そう言えば、もう一人の…金髪の人が眉をひそめる。





「…鬼を知らぬだと…?本気でそんなことを言っているのか?
我が同胞ともあろう者が…雪村千鶴」




「!!どうして私の名前を!?」





わからないことだらけだ。
この人達は何を言っているんだろうか。
どうして私の名前を知っているんだろうか。

頭が混乱してきた。
だけど……





「君は、並の人間とは思えないくらい、怪我の治りが早くありませんか?」





赤髪の人にそう言われ、内心どきりとする。





(どうして…それを知っているのは…)





「何なら、ここで試したほうが早ぇか?」





そう言って銃口を向けてきたため、私は小太刀に手をかける。





「止せ不知火。
否定しようが肯定しようがどの道俺達の行動は変わらん。

…多くは語らぬ。
鬼を示す姓と東の鬼の小太刀…証拠としてはそれのみで十分だ」





そう言われ、私はさらに分からなくなる。
雪村の姓とこの小太刀がなんだというんだろう。





「言っておくがお前を連れていくのに同意など必要としていない。

……女鬼は貴重だ。共に来い」





そう言って私の目の前に飛び降りたその人に、意を決して小太刀を抜こうとしたその時、





―――ヒュッ





と、金髪の人めがけて、横から何かが飛んできた。

と思ったら、私の視界に見慣れた羽織りが広がり、甲高い金属音が響く。





―――キイィィン!!!





見慣れた太刀筋、見慣れた後ろ姿。





――――「和葉!!」





和葉は私に背を向けてその人を睨みつけ、





「…何こいつら、知り合い?」





と言った。

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