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戦う女
10 [side千鶴]
翌日



朝早くから、幹部の皆さんと和葉と私はある一室に集まった。

私は和葉と二人でお茶をいれ、皆さんのところに運ぶ。

状況が状況なだけに、皆さんは何も言わず、ただ黙ってお茶を飲んでいた。











「山南さん、峠は越えたみたいだよ」





そう言って入ってきたのは、沖田さんだった。
続いて入ってきた井上さんも、今はまだ静かに寝ていると笑った。


私達はとりあえずほっと一息つく。


成功したのかと言えば、目が覚めるまでわからないみたいだけど…





っとそこまで話して、障子側に座っていた和葉が突然ばっと立ち上がった。





「伊東殿が来ます」





小声でそう言って襖の向こうに消えた和葉。

入れ替わりで、和葉の言った通り伊東さんが入ってきた。





「おはようございます」





という声に、皆さんは目を見張る。





「和葉の奴…よく分かったな…」





と永倉さんが小さく呟いた。










「あら…こんな爽やかな朝なのに、皆さんの顔色が優れませんのは
昨夜の騒ぎと関係あるんじゃありません?」





と鋭い目を向ける伊東さんに、皆さんはたじろぐ。

そんな中斎藤さんがすっと立ち上がり、伊東さんに事の次第を説明した。

といっても、肝心な所は何も言えないみたいだけど…



伊東さんは斎藤さんの説明を聞くと、意外にもすんなり納得して部屋を出て行った。

皆さんは安堵のため息をつく。





「…はぁ…」





とため息をついて、和葉も部屋に入ってきた。










「それにしても君、よく分かったね。
伊東さんが来るの」





と沖田さんが言うと、和葉は私の隣に座りながら答える。





「私あの人の足音だけはすぐ分かるんですよ」





と苦笑した。

きっと例の伊東さんに勝ってしまった事件から、ずっと避け続けてきたからだろう。





「それはともかく…恐らく伊東殿は山南さん絡みで何かあったって気付いてると思いますよ。
そうじゃなきゃ、あの人があんなに簡単に引き下がるはずありませんから」





和葉は近藤さんと土方さんのほうを見てそう言った。

土方さんはため息をついて答える。





「…だろうな。

とりあえず、山南さんの様子を見てくるか…

伊東のことも含め、今後のことについては追って連絡する。
あまりことを荒立てねぇように、隊務は普段通りこなせ。いいな」





その言葉で解散になった。












そして夜…


再び集まった私達は、山南さんは成功はしたが、
表向き山南さんは死んだことにすること、
屯所を西本願寺に移すことを土方さんより伝えられた。

伊東さん達に薬の存在を知られないためにそうするようだ。






「でも…相手は伊東殿だからな…そういつまでも隠し通せないと思うよ。
だからばれる前に何とか…」





後からそう言った和葉。
和葉も、きっとどうしたらいいかわからないんだろう。

















それからしばらくして、屯所が西本願寺に移った。

和葉曰く、相当強行手段に出たんだとか。



こうして幹部の皆さんと和葉と私で、山南さんを他の皆さんから隠す日々が始まった。

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あきゅろす。
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