戦う女
9 [side土方]
一番組と三番組が制圧を完了したため、総司と斎藤を他の場所に援軍に出し、間もなく鎮圧が完了した。
「なんかつまんないな。もうちょっと楽しめると思ったのに。
拍子抜けしちゃった」
「だな。やけに簡単すぎやしねぇか?」
「ああ。…あるいはこの襲撃自体がただの罠という可能性もある」
「罠?じゃあ狙いは他のものってこと?一君」
「!!屯所!屯所は大丈夫かよ!?今は千鶴と和葉しかいないはずだぜ!?」
新八の言葉に全員がこちらをむく。
「ったく…今頃気付くな…。
屯所は大丈夫だ。さっき山崎を走らせたが、二人とも無事だった。
ただし…」
皆安堵のため息とともに、俺の次の言葉を待つ。
俺は山崎の報告を思い出した。
――――『屯所は大丈夫です。ですが…宮尾和葉について、ご報告したいことがあります』
そう言った山崎の表情はどことなく雲っていた。
「?―副長?」
斎藤が怪訝な表情で言った。
「…宮尾について山崎が報告してぇことがあるらしい。夜、幹部は全員集合だ」
「…へぇ。彼女何者か分かったんですか?楽しみだなぁ」
そう言った総司を無視し、俺は踵を返して近藤さんの元へ向かった。
それから陣を引き上げて屯所に帰ると、千鶴と宮尾は先に戻っていた源さんと山崎と一緒に、運びこまれる怪我人の手当てに奔走していた。
「土方さん!お怪我はありませんか?」
俺を見つけた千鶴が駆け寄ってきた。
「ああ。大丈夫だ。お前らも留守番中大丈夫だったか?」
何気なく聞いた一言だったが、
「あ…はい!大丈夫でしたよ」
千鶴の反応には若干違和感があり、何かあったとすぐに分かった。
「…そうか。
引き続き怪我人の手当てを頼む。まだまだたくさんいるからな。
宮尾と手分けしてうまく回してくれ」
「はい!」
俺は頷いて、向こうで手当てをしている宮尾に視線を移した。
俺の視線に気付いた宮尾が、顔をあげ、軽く会釈をする。
その時、宮尾の格好が出陣前と変わっていることに気がついた――…。
夜、全てが落ち着いて隊士が寝静まると、俺は幹部を一室に集めた。
総司と斎藤が最後に二人で入ってきた。
「彼女、これからどうするのかな?」
「今から聞く報告次第なのではないか?処分しないところを見ると、敵ではないようだが」
俺は一足先に山崎の報告を聞いていた。
報告には驚いたが、斎藤の言う通り敵ではなさそうだったから、処分もせず、監視もつけなかった。
だが、完全には信用できない。
「全員集まったな。では、山崎君」
近藤さんが話を切り出す。
「お疲れのところすみません。ご報告申し上げます。
自分は全て見ていた訳ではないのですが…」
山崎はそう話し始め、皆は耳を傾ける。
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