戦う女
8 [side和葉]
私達は手を繋いで屯所へと歩いた。
千鶴はさっきから喋らない。
無理もない。
突然あんなことに直面した上に、殺していないとはいえ衝撃的な光景を見せつけられたのだから。
「……「和葉」
話の切り出しに迷っていると、千鶴が口を開いた。
「ありがとね、和葉。助けてくれて。
私、何もできなかったね」
意外な言葉が出てきた。
そう言って無理に笑った千鶴に、私は思わず立ち止まって言った。
「そうじゃないよ!千鶴が勇気出して動いてくれたから、私は戦えたんだよ?だから……
……ごめん。私のせいだね。一人で勝手に悩んで戦って…千鶴を振り回したから…
ごめんね…私のこと怖くなった?」
(あー…何やってんだか…)
いつからか、私は自分が怖くなった。
人を殺す術を持っているんだって気付いたから。
さっきだって、千鶴が殺されそうになって頭に血が昇った。
おそらく最初の一人は死んでしまっただろう。
先生の最期の言葉に背いてしまった。
「怖くないよ!私の為に命懸けで助けてくれたんだもん。和葉が謝ることなんて何もない。ただちょっとびっくりして…
もう駄目だって思ったのに、和葉が突然出てきて一瞬で倒しちゃったからびっくりして…
だから、和葉のことを怖がったわけじゃない。
――ありがとね、和葉。
本当にありがとう」
そう言ってまた笑った。
今度はいつも通りの笑顔で。
(ああ…
まただ…よかった…)
安心する。
千鶴の笑顔に、また救われた。
「…?和「よかった―」
黙って俯いた私に、千鶴が首を傾げた。
「え?」
「よかった。…千鶴が無事でよかった」
そう言って、自分の気持ちをごまかした。
「…強いんだね、和葉は」
「ううん。全然。
…千鶴のおかげだよ」
小さく呟いた声は、千鶴には聞こえなかった。
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