戦う女
6 [side千鶴]
「……」
数日経った今も、色々なことを考えてしまう。
父様のこと、沖田さんのこと。
結局、自分には何も出来ないままだ。
───思わず俯いた、その時……
「お前は雑用をやらされているのか」
「!!」
聞き覚えのある声に慌てて振り返ると、さっきは誰もいなかった場所に、風間さんが立っていた。
「なっ…何しに来たんですか!?」
持っていた竹箒を構える。
構えながら、小太刀を部屋に置いてきたことを後悔した。
「ふん…そういきり立つな。
今日は戦いに来たわけではない。
……貴様と綱道の関係は何だ?」
「!?」
突然風間さんの口から父様の名が出てきて、ひどく混乱した。
(父様を知っているの──!?
なぜ─…)
混乱したものの、ここでうろたえてはいけないと思い、私は臆せず答える。
「……雪村綱道は、私の父です!」
「!……」
そう言うと、風間さんは何か考えこむように押し黙った。
ややあって、風間さんは私の後ろに目線を移し、笑った。
「ふん…どこかで見た顔だな、ガキ」
「…覚えていてくれたとは光栄だ」
「!……和葉!!」
和葉は刀を抜き、私を自分の背に庇うように前に出た。
「千鶴、こんな奴に素直に教えてやる必要ないよ」
和葉がそう言って構える。
「敵地に単独で乗り込むとは……悪いがそんな勝手は見過ごせねぇな」
「昼間っから何しにきた?
女を口説くには、まだ早い時間だぜ」
「こいつに近づくんじゃねぇ!!」
そう言って次々に、土方さん、原田さん、平助君も駆け付けてくれた。
「ふん…そうして群れるは犬猫の如く、だな」
嘲笑する風間さんに、土方さんも笑う。
「…言ってくれる」
殺気が満ちて、空気が緊張していたけど、風間さんは刀を抜かなかった。
「ふん…
…千鶴、綱道はこちら側にいる。
意味は分かるな?
お前の父は、幕府を裏切ったということだ」
「!!」
(そんな───……)
突然そんなことを言われ、私は呆然と立ちつくす。
「お前がここにいる意味はなんだ?
よくよく考えることだな」
そう言って、風間さんは去っていった。
「……千鶴、そんな顔しないで。
本当のことかどうか、まだ分からないでしょ?」
俯いて動かない私に、和葉が刀を納めながらそう言う。
「綱道さん探しには、監察方も動いている。
そのうち何か、情報が入るはずだ」
土方さんもそう言ってくれる。
───もし本当に父様が幕府を裏切ったなら、父様は新選組と敵対する立場にいるということだ。
(…私がここにいる意味は……
私はここにいる資格があるの…?)
「千鶴」
和葉の声に、はっとして顔を上げる。
「千鶴は千鶴でしょ。
たとえお父さんが幕府側にいたとしても、千鶴が私達を仲間だと思ってくれてるなら、私達は千鶴の仲間だよ」
────和葉には、私の考えてることなんてお見通しだ。
「……うん、ありがとう」
そんな和葉に、私は微笑を浮かべて返事をするだけで精一杯だった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!