戦う女
9 [side和葉]
新選組で働かせてもらえるようになった私は、夕方、千鶴さんと一緒に夕餉の仕度をしていた。
「千鶴さん、これも普通に並べちゃっていいですか?」
「あ、はい!お願いします」
私は実は炊事があまり得意ではない。
だがまあ、千鶴さんと一緒に作ったし味は大丈夫だろう。
「あの…」
食膳を並べていると、千鶴さんが話しかけてきた。
「?はい?」
「私達、歳が近いし女の子同士だし…お互い敬語はやめませんか?
私…もっと、和葉さんと親しくなりたいなぁと思って…」
千鶴さんは遠慮がちにも、私にそう言って笑ってくれた。
私は少しびっくりしたが、自然と笑顔で言葉が出た。
「…うん。ありがとう。そうしようか。
…あ、じゃあせっかくだからお互い呼び捨てにしない?
実はさん付け馴れてなくて…」
「!いいの?」
千鶴さんはびっくりしたように聞いてきた。
どうやら私はかなりお固い人だと思われていたらしい。
単に今まで各地を点々としていて親しい人もいなかったから、ずっとこうしていただけなのだが。
そして…今回も同じだから――
「うん。ね、千鶴」
「…うん!ありがとう、和葉」
にっこり笑った千鶴。
私も一緒に笑う。
(―こんなに笑うの久しぶりな気がする―…)
そう思った。
「んじゃあ俺達も、和葉って呼んでいいか?」
そう言って厨房に入って来たのは、永倉さん、原田さん、藤堂さんだ。
原田さんと藤堂さんは何やら口喧嘩をしている。
「皆さん仲がよろしいんですね。
―ええ、どうぞ」
私は微笑を浮かべて答えた。
「「こんな奴と仲良くねぇよ!!」」
原田さんと藤堂さんは同時に叫んだ。
私と千鶴は思いっきり噴き出して笑った。
「そんな息ぴったりで否定されても説得力ないです」
二人はイマイチ納得いかない表情だったが、私達が笑ってるのを見て渋々口喧嘩をやめた。
(こんなに楽しいの、本当に久しぶりだな…
―十日…しかないのか…)
私は皆さんと話しながらそう思った。
長い放浪生活のなかでそんな風に思ったのは、これが初めてだ。
―――これから十日、こんな生活が続くと思っていた。
数日後、事件は起こる―
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