BOOK
善とは何か(HTF)
「だから何度も言ってるじゃないか、だめなんだって」
ここは町はずれの倉庫の中。
冷たいコンクリートに赤いしぶきが飛び散っている中で奴の声だけが響き渡る。
そんな中俺はと言うと、ロープでぐるぐるにしばりつけられかろうじて綺麗だったところに転がされていた。
「君が暴れる度にどれだけの住民が無くなっていると思っているんだい?ちゃんと分かってるのかい?」
―――こうやって俺みたいなのから住人を守ろうとしてかえって殺しているお前が言えることじゃねぇだろ
そう思うも猿轡をかまされており返事が出来ない。
腕に仕込んでおいたナイフを取り出すも、ロープが靴く縛ってあるため腕が動かない
「いつもいつも私はこんなことがしたくてヒーローをしているわけではないんだよ?僕だって辛いんだ」
そう言って彼は猿轡を外す。クソヒーローの顔にはしょうがないなとでも言いたげな表情が浮かんでいた。
気に入らない。
「もう住民を傷つけないかい?」
「NOといったら?」
にやりと笑って見せる。はん、誰が大人しくしてるかよ。
「そうかい・・・それは残念だな。私は穏便に済ませたかったのだが君がその気ならしょうがない」
そういって奴は―――
俺の腹部にナイフを刺した。
「ぐはっ…な、何、しやがる…、てめぇっ」
傷みにより呼吸が難しい。クッソヒーローめ…あいつ本当にヒーローなのかよっ・・・!!
「次に君と会うときはこんな薄暗い倉庫の中じゃなくてどちらかの家で一緒にクッキーでも焼いて駄弁りたいものだね」
そう言って俺の髪をなでる。
もう視界には何も映らない。声も遠くなっていく―――
「また明日」
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