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 「よく解らないけど、あなたにも苛々するし僕自身にも苛々する。」


 なあ恭弥、俺達恋人同士だよな?
 なんで挨拶のハグさえさしてくんねーんだ?
 どうして、久しぶり、って笑いかけただけで俺、トンファーで滅多打ちにされるんだ?

 ……と、応接室の床にノビたまま俺が恭弥を見上げて問いかけると、愛用の武器をどこへともなくしまい込んだ俺の愛しい、凶悪な風紀委員長は、少し考えてからそう言った。
 イライラ?
 それは何ですかヒバリさん。俺、あなたのサンドバッグですか。
 ……確かに恭弥は口より先に拳が出、口より先に拳で語る奴だ。解ってる、それはよく解ってる。
 けど……さすがに……ちょっと、悲しい。

 「早く起きなよ。これ以上僕を苛々させないで。」

 手も差し出して下さらない俺の姫様の為に、俺は痛む全身に鞭打ち立ち上がる。
 鞭を取り出す余裕もなくボコボコにされたのだ。ダメージを軽減させる手段は精々が受け身くらいしかなくて。

 「……恭弥ぁ……」

 「うるさいよ……馬鹿うま。」

 「なっ……!」

 跳ね馬だハネウマ!と文句を付けながら無理矢理恭弥を腕に抱き込むと、びく、と小さく恭弥が震える。
 そんなに嫌、と聞こうとして、その耳の先が赤くなっているのを見つけた。
 ……嫌われては、いないらしい。

 「……なあ恭弥、何がそんなに苛々するんだ?」

 「解らないって言ったでしょ……なんでこんなにあなたの事ばっかり考えてるのか解らなくて苛々するし、僕をそんなふうにするあなたにも苛々するんだ……!!」

 ……それは……告白、ですよね恭弥さん?

 八つ当たりみたいな言い方だけど。
 八つ当たりみたいにまた頭突きされましたけど。

 「恭弥……!」

 恭弥の頭突きがクリーンヒットしてガンガン痛む顎は一先ず我慢。
 ぎゅうと抱き締める腕に力を込めてやれば、恭弥の耳はさっきよりも赤くなる。

 「ちょっ……何……!?」

 「愛されてんだなー、って思って。」

 「何それ……訳わからない……」

 「いいんだよ、そのうち解るから。」

 「そのうちじゃ嫌。今教えろ。」

 そう言って恭弥はぷうと頬を膨らませる。
 ああもう、鈍いってのは残酷なことだ!!

 「お前、俺が好きなんだよ。」

 俺の言葉に、恭弥はかちん、と固まった。
 やっぱりなぁ、と思いながら、俺は苦笑混じりに続ける。

 「お前、好きって気持ちにとまどってんだよ。」

 誰かを好きだなんて、思ったこと無いのだろう。
 その戸惑いを教えてやれたのが俺で本当に良かった、と内心喜びを抑えきれない。
 まあ、当の本人は何言ってるの馬鹿そんなことあるわけ無い、とかわめいてるけれど。
 赤くなったその頬が何よりの証拠だ。

 だからもうしばらく、おとなしく殴られてやろうかと思う。
 恭弥が自分の気持ちに気づく日…………は、来るのだろうか……


 やっぱ、少し抗議しよう………










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