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時には星物語を




 星物語なんかには興味がないけれど、それでも一年に一度しか逢えないというのはなかなかの悲劇だと思う。
 ひと月に一度程度の僕らだって、全然足りない、と思っているのに。
 ……そんなこと、僕の隣で大口開けて間抜けな寝顔を晒してる牽牛には、口が裂けても言ってあげないけど。
 ……あれ、そうすると僕は織女か。それはあまりよろしくないな。

 「たなばた、なんてあなたは知らないか。」

 ベッドの上で膝を抱えるようにして座り、隣で眠るディーノの髪を梳くように撫ぜる。

 「それにしても……酷い天気。」

 雲は厚く垂れ込め、それどころか雷鳴が轟き雨粒が窓ガラスを叩きつけている。
 これじゃ、天の川も増水で氾濫だ。
 織女と牽牛は、出会えただろうか。

 僕らしくもないセンチメンタリズムにちょっと苦笑して、布団をめくるとディーノの隣に潜り込んだ。
 たなばた、なんて知らないだろうに、わざわざこんな日に会いに来るなんて。
 別にそんなことで運命だとかを感じる気はさらさらないけど、こうやって会えることは嬉しいと思う。

 「僕たちは……幸せ、かもね。」

 無理して予定を詰めて来たのだろうディーノは、せっかく二人きりの夜だと言うのにさっさと高鼾だけれど。
 それでも、触れることはできるから。

 「……好きだよ、ディーノ。」

 彼の胸に顔を押し付けるようにしてつぶやくと。

 「俺も、恭弥。」

 突然、ディーノがぱちりと目を開けた。

 「なっ………!!」

 思わず目の前の胸板を突き放すと、にやけた顔のディーノが僕を見下ろしていた。

 「起きてたの……?!」

 「んー、なんとなく意識はあったけど眠くてさー……でも、恭弥の声はちゃんと聞いてたぜ?」

 いやらしい顔で笑ったディーノは、幸せ、と馬鹿みたいに目尻を下げて僕を強く抱きしめる。
 息が苦しくなってもがくと、ようやく腕が緩められた。
 けれどなんとなく、突き放す気も起きなくて、僕はそのままディーノの胸に額を擦り付けた。ふわりと香水か何かの香りが鼻につく。

 「なんだよ恭弥……今日は甘えん坊だな?」

 「うるさい……気分だよ……」

 だって今日は、会えない二人が会うことを許される日だから。 たまには少しだけ、素直になってもいいじゃないか。


 「なあ恭弥、たなばた、って何だ?」


 お決まりの質問をしてくるディーノに、星物語でもしてあげよう。









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七夕ネタどうしよう、と思っていたら折しも大嵐に見舞われこんな話に。
たまにはgdgdな感じで。




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