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You are SO sweet,Baby.
*my sweet?の続きです*





 ホテルの部屋は、むせかえるような甘い香りに支配されていた。
 見渡す限りの花、花、花、薔薇の花。

 「……帰る。」

 「あ、まてコラ!」

 部屋の内部を一目見るなり踵を返した雲雀の腕を、ディーノは慌てて掴んで引き留める。

 「なんなの、コレ。」

 「……ばれんたいん。」

 こんなのじゃ恭弥は喜ばない、って解ってるけど、やってみたかったんだよこういうの。と、不機嫌極まりない顔をしている雲雀に慌てたように弁解しながら、ディーノはぐいぐいと雲雀を引っ張って、部屋の真ん中にあるソファへ座らせた。二人が座れるスペースを残して敷き詰められていた薔薇が、ソファの軋みにふわりと揺れる。

 「どうしたら恭弥が喜んでくれるか、超考えた。……けど、どうしても思いつかなくて……」

 こんなことしか出来なかった、とディーノは、ソファの前に据えられたローテーブルの上に並んだケーキを目で示した。
 スフレ・チーズにミルフィーユにザッハ・トルテに、モンブラン、フルーツのタルトレット、それからど真ん中にはイチゴのショートケーキがワンホール。
 テーブルからはみ出さんばかりに並べられたそれらは全て、雲雀お気に入りの洋菓子店、ラ・ナミモリーヌの謹製。
 それに気づいたのであろう雲雀の目が、微かにきらきらしているのに気づかないディーノではない。

 「まだあるんだぜ?」

 思った以上の好感触に、ディーノは少し浮かれて周囲を見渡す。
 隣のソファに、花にまみれて無造作に置かれたプレゼントボックスの中には溢れんばかりのチョコレート。ベッド脇のサイドボードの上にはずらりと並んだマカロンとキャンディ。その他、部屋中のありとあらゆる場所にスイーツの山。

 「馬鹿じゃないの……」

 口ではそう言いながらも、雲雀の目は部屋中に隠された宝物を探すように、落ち着きなく辺りを見回している。
 顔に、というか好戦的な性格にはまるで似合わず甘いものに目がない雲雀のこと、変にアクセサリーなんか贈って怒らせるよりはまだ少しは喜んでくれるかと、雲雀が好きそうなスイーツを片っ端から用意したのは、悪い選択ではなかったようだ。
 ジャッポーネ式のバレンタインに関する知識を仕入れ損ねたのは失態だったが、しかし結果として雲雀は菓子を期待していたようだし丁度良い。
 ディーノは満足げに笑うと、雲雀の肩を抱き寄せて頬に軽くキスをする。

 「食いきれねー分は持って帰ればいいからさ……好きなのからどうぞ?」

 「本当にあなたって馬鹿だね。」

 つれない台詞も、声が弾んでいては可愛いばかり。
 ほらどうぞ、とショートケーキにフォークを入れて、一口分を雲雀の口元へと運んでやる。

 「一人で食べられるよ。」

 つん、と雲雀はディーノの手からフォークを奪う。
 生クリームたっぷりのケーキを頬張る雲雀の姿なんて、誰が想像できよう。いや、誰も考えすらしないだろう。
 そんな可愛らしい姿を独り占めできる喜びに、ディーノの胸は震える。
 ああ、一生懸命考えた甲斐もあったというもの、と喜びをかみしめながら雲雀の方を伺うと、それは幸せそうな顔でショートケーキを平らげようとしていた。
 口元に生クリームをくっつけたその姿は、なんだか酷く幼く見える。こんな時だけは年相応の顔になるのだと、ディーノは微笑ましい気持ちで雲雀の頬に手をやった。

 「なに。」

 至福の時間を邪魔され、雲雀は不機嫌そうに眉を顰める。
 それすらも可愛いくて愛おしくて、ディーノの頬は笑みの形に崩れる。

 「俺の国じゃ、バレンタインって恋人同士が贈り物をしあう日なんだよな。」

 「だから?」

 「恭弥からもプレゼント頂戴?」

 「生憎、僕は日本人だよ。日本じゃ女が……っ!」

 雲雀が話し終える前に、ディーノの唇が雲雀の頬に触れ、そこに貼り付いていた生クリームをぺろりと掬い取って離れていく。
 一瞬の出来事に目を瞬かせている雲雀に、今度はゆっくりキスをした。

 「まあ、恭弥が何て言っても勝手に貰うけど。」

 どんなスイーツよりも甘いキスを。










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お粗末。
べったべたに甘いのが書きたくて、尻切れになっていたバレンタインの続きを書いてみましたがやっぱりまた尻切れ。
この後は裏突入☆と妄想だけは膨らみつつ、さすがにもう季節はずれ甚だしいので続きません。残念。
ウチの恭弥は甘党なんです。





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あきゅろす。
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