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短編
泣き虫(男前風紀委員長×泣き虫会長)


とある学校の生徒会。



豪華な皮の椅子にこしかける美形の男と、その男と向かい合って立っているこれもまた顔のきれいな集団。


雲ひとつない快晴で晴れ晴れとした天気とは裏腹に、この部屋の空気は重く、息が詰まるような胸苦しさと緊張感がただよっている。
椅子の男と向かい合って立っている男たちも、額には油汗がうかび、かすかに手もふるえていた。


そんな男たちを椅子の男は感情の全く写らない、まるで見下すかのような目でじっとみつめている。


そんな中、耐えられなくなったのか、ひとりの眼鏡をかけた男が秀麗な顔をゆがませながら叫ぶようにいう。


「っ!なんなんですか!言いたいことがあるなら言えばいいじゃないですかっ。そんなに私たちが気にくわないんですか!」





「…気にくわない?」





椅子の男が目を細める。



「ひっ…!」


か細い悲鳴をあげ、白い顔をさらに白くして、動揺のあまりに尻餅をつく。



ガタリと男が椅子から立ち上がる。



「っあ…!うわぁっ!」



あまりの恐怖に尻餅をついたまま後退する。



椅子の男はそんな男をつまらなそうな目で見た後、周りで固唾を飲んで見ていた男たちを鋭く見据えた。


ビックううう!!


し、失礼しました!!!と、我先にというかのように周りを押しのけ蜘蛛の巣を散らすように逃げて行く男たち。
それを冷めた目でみつめたあと、とり残された眼鏡の男に目をむける。



「…○*☆$あ%ひぎぁーー!!」



よくわからない言葉をさけびながらはいずるようにして眼鏡はにげていった。



それをも見送り、男は再びギシッと椅子にこしかける。

ドアをしばらく厳格な面持ちで眺めていたかと思うと、突然うつむき、体を小さく震わせ始めた。


その震えはどんどん大きくなり、やがてそれは嗚咽にかわった。



「っ…こわ、かった」



威厳もへったくれもない声。


溢れた涙がポロポロと机にこぼれる。



先ほどは能面のようだった顔がいまはだらしなくくずれ、男らしい顔立ちのはずなのに、それがいまはウサギのように幼くみえる。



そう、彼は泣き虫だった。

しかもビビリでもある。



だからこそ彼はそんな自分を隠すために仮面をかぶった。

泣き虫だとばれないように常に冷静を装い、

ビビリだとばれないように口数を少なく、無表情をてっし

そんな自分をたもつために人と距離をおいた。


そしたらなぜか生徒会長という大きな職をいつの間にか荷わされ、名前も知らない美形たちと仕事をさせられた。


美形たちは無駄にキラキラしてるし、廊下を歩けばガン見されるし、叫んで俺の鼓膜をやぶろうとしてくるし、媚薬入りとか髪の毛入ったおかし渡してくるし、近づけば倒れられるし…




もうやだ学校こわい




そう思って引きこもろうとしたところで転校生がやってきて、役員たちは仕事をしなくなり、生徒会室にもこなくなった。しょうがなく、引きこもりは断念。


いや、別に来なくていい、てかそっちのが嬉しいけど仕事してもらわないと俺こまる。
寝れないからね?現に俺、今睡眠時間、平均して3時間だからね?


あー。フラフラしてきた。
やっぱ仕事してっていおう。


会って話すというだけで手足がふるえてきたけど、ここは自分の睡眠時間のために我慢だ。ふんばれ!自分!


…ということで呼んでみたのだけど、話にならなかった。


お願いするにしてもどうしよう?と考えてるうちに怒鳴られるし、思わずちびりそうになってオウム返しに返事したら副会長がころんじゃって、助け起こそうとしてたちあがったんだけどなぜかにげられるし。
しょうがないのでまわりに助けを求めたけど、見捨てられてしまった。



うっ…嫌われてるのは分かってたけど、ここまであからさまだとつらいなぁ



なんだかさらにかなしくなって、ひっく、ひっく、と嗚咽がさらにひどくなる。


「おい、失礼すん…ぞ」


そうして俺が号泣する中、ガチャッとドアを乱暴に開けて入ってきたのは風紀委員長だった。

そんな彼は今の俺の状態をみて普段は絶対にしないような間抜けヅラをさらしている。

ばさっと、彼がもっていた書類の束がおち、床にひろがった。



あー、俺おわった。



今まで血の滲むような努力で隠しとうしてきたが、ここまでかあー


明日には学校じゅうに俺が泣き虫でビビリだといううわさがひろまるのだろう。


混乱と悲しみと恐怖と

ごっちゃになって入り乱れる。


涙を止めようと手で拭っても拭っても、涙は泉のようにつぎつぎと溢れてとまらない。


こすりすぎて目がいたくなってきた。




このまま石鹸みたいに、俺という存在がきえてしまえばいいのに



負の感情がぐるぐると頭の中をかけまわる。




するとこすっていた手を誰かに優しくとらわれる感触。




ここには、俺と彼しかいないわけで。




「…こすんな。目がはれる」




口調は普段話すときのものとは違い、驚くほど優しくて。こちらをのぞく目は、困惑と心配の色にそまっていた。



久々に触れた人の優しさに涙腺がますますゆるむ。


俺どんだけ涙腺ゆるいんだとか色々おもわないこともないけど、久々に感じた温かな気持ちは、確かにずっとはりつめていた俺の緊張をほぐしていった。




ふわりと何か温かい大きいもので目を覆われる。




そしてそれは涙をぬぐうと、俺の前髪をかきあげた。




涙でにじんだ視界でも、やっぱり彼はかっこよくて、ああ、男前だなぁと場違いなことを思った。




するりと彼が俺の頬をなでる。





「一人でなくな」




俺を、たよれ。




おでこに感じた温かい感触に、不思議と、涙がとまった。





fin


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あきゅろす。
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