恐怖コラム セイラムの魔女裁判2 彼は悪魔憑きを行った魔女がいるにちがいないと考えた。そして、黒人の使用人ティチューバに目をつける。 彼女はちょうど、エリザベスのためにライ麦に子どもの尿を混ぜて灰にしたものをまぶしたケーキを作ろうとしていた。これは呪術のひとつで、このケーキを犬にくわせると病が治るというものだった。彼女はエリザベスと、子どもたちを愛していた。 彼女の行動をみて、だがサミュエルは確信した。こいつが魔法を使い悪魔をおろしたのだと。 そして、ティチューバへの拷問が行われた。 もし村に抗争がなかったら、もし彼女が黒人ではなかったら、もし彼女がエリザベスの心を癒したいと考えなかったら……そんなことは行われなかったかもしれない。 恐ろしい拷問の末、ティチューバは「ブードゥー教の妖術を使えます」と「自白」した。 彼女は経験上の知恵として自白したほうがよいと判断した。はい、はい、と従っていれば、抵抗するより酷い目にはあわないということを、奴隷生活で知っていたのだろう。 そしてここから、本当の意味で事件は幕をあける。 エリザベス・アリゲイルの二人は、大人たちに呼び出された。そして二人は、「ティチューバ以外にもいるのでは?」と尋ねられた。 二人は困惑した。大人の強い問いかけに、魔女の名前を言わなければならないという強迫観念に襲われた。 9歳と11歳の幼き少女は、慎重に大人たちを“選び”んだ。そして三人の女性の名前をあげた。浮浪者や離婚経験者といった、村でも立場の弱い女たちであった。 これにより、1692年2月29日、ティチューバ、サラ・グッド、サラ・オズボーンの三名に対して逮捕状が出された。 3月1日、裁判は始まる。最初は予備審査だった。ここで、グッドとオズバーンは容疑を否認する。当たり前だ。彼女たちは立場の弱い、だが善良な市民であったのだから。 しかしこのとき、承認として列席していたエリザベスたちが暴れだし、こう叫んだ。 「ああ、あの人たちは霊を使役しているわ!」 子どもたちは自分たちの行動が過ちだと大人に知られるのが恐ろしかったのだ……。 グッドとオズバーンはこうしてギルティを下された。オズバーンは二ヵ月後、獄中で死ぬこととなる。 ティチューバは証人や判事に促され、更に証言をし続けた。哀れで愚かなティチューバは協力者の存在をほのめかし、再び娘たちが人々を名指しし始めた。 まず一人の少女が、次に女性が、その次は夫妻が……。 およそ100名の村人たちが彼女たちの指の先にあった。翌日から特別法廷が開かれ、次々、ギルティを下された。 [前へ][次へ] [戻る] |