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恐怖コラム
人食いビーン一家
 歴史上最悪といわれている一家がいる。その名も「ビーン一家」。驚くなかれこの一家、四半世紀もの間、人肉を食べながら繁栄していた。
 それは、今から六百年も前、1400年代のこと。

 主のソニーは、スコットランド人の田舎者だった。もともと乱暴で面倒くさがりやな彼は、さっさと仕事を捨てると、同じく気性の荒い女を生涯の伴侶として、なぜか穴ぐらに住み始めた。約二キロの穴ぐらだったが、二日に一回は入り口が水没するようなろくでもない場所だった。あえてこのような場所を選ぶあたり、もともとよほどの変人だったのだろう。
 そして働く気など毛頭もない面倒くさがり屋のソニーは、強盗をして金を稼ぐことを思い立った。彼は旅人を襲うと、必ず殺した。

 とはいっても、金品などは回収しなかった。そこから足がつくと不味いと考えたからだ(変なところで頭が良いものである)。そのため、飢えることもしばしばあった。ソニーは、食糧問題を解決するためにある考えに至った。
「殺した人間の身体を食べればいいじゃないか」
 これが最悪の一家の始まりとなった。

 ソニーと妻のアイディアはとんとん拍子に進んだ。慣れた手つきで旅人を殺すと、穴ぐらまで死体を運び、塩漬けや燻製にした。それらを壁に飾り、骨は適当に積んだ。これを夫妻は、二十年以上やってのけた。
 その二十年もの間、彼らは独特の習慣を作り上げていった。彼ら……そう、ソニーと妻は子を作り、その子どもたちは互いに身体を交わり、なんと五十人もの大所帯になった。

 誘拐と殺人を重ねていたビーン一家。人肉の加工技術と人狩りの技術は洗練され、旅人を高いチームワークで襲うなど、まるでひとつの軍隊のようだったという。

 そんな一家にも、やがて罰が下るときがきた。いつものように旅人の夫婦を襲っていると、キャラバンが通りがかった。集団に恐れおののいた彼らはすぐに穴ぐらへと逃げ去った。ミンチにした女の死体を置き去りにして。
 犯行から二十五年目、彼らに初めて足がついた瞬間だった。

 スコットランド王はすぐに武装軍隊を召還、ビーン一家は全員逮捕された。彼らは一人も罪の意識を感じていなかったというから驚きだ(生まれたときから人肉を食べていた者もいたのだから仕方のないことだったのかもしれない)。
 嫌悪を抱く人々の強い意志によって、ビーン一家は老人から赤ん坊まで死刑に処された。男たちは生きたまま切り刻まれ、女たちは火あぶりにされたという。



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あきゅろす。
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