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恐怖コラム

 ある男が田舎から都会の団地に引っ越してきた。
 古いタイプの団地で、巨大な墓石が並んでたっているような感覚を覚える薄きみ悪いところであったが、収入が安かったことから長く住むことになりそうだった。

 引っ越してきた当日、男が水道の蛇口をひねると赤錆混じりのドロリとした水が出てきた。少しの間、流していると普通の水になった。それでも、住んでいた田舎と比べると生臭く、錆と黴のような臭いがあった。
 煮沸消毒するにもガス代がもったいない。男は仕方なくその水を飲み続けた。慣れるかと思った臭みは日を追うごとに強くなっていった。

 数ヶ月後、男はいつものようにシャワーを浴びていた。夏の暑い日で、水を豪快に頭から被っていた。と、妙な感覚が男の耳元をつるりと滑った。掴んでみると、ひじょうに長い髪だった。
 男は疑問に感じる。なぜなら男の髪の毛は短かったからだ。

 髪の毛は、女のもののような気がした。黒髪の女性が腰までの髪を揺らして歩く姿が想像できた。
 男はゾッとした。男に髪の長い恋人はいない。

 次の瞬間、男の目の前で黒い闇が爆発した。後じさって、何事かとみると、背筋が凍った。
 シャワーヘッドから次々と、長い黒髪が流れている。それは男の体に張り付くと、虫のようにうごめいた。
 あまりの出来事に男は絶叫し、失神した。

 翌日、男の住む団地の屋上、そこにぽつんとたつ貯水タンクから、女の水死体が発見された。ぶくぶくにふくれて、肌は緑色に変色し、腐敗していた。ちょうど、男が引っ越してきたあたりに殺されて捨てられたと報道された。
 男の口に、引っ越した当初の、少し赤く生臭い水の足がよみがえる。
 あれは本当に、赤錆だったのだろうかと。


 この都市伝説が広まった数年後、あるホラー映画が大ヒットすることとなる。その映画のタイトルは、聞けば誰もが知っていると思うはずだ。
 仄暗い水の底は、とても高い場所にある。


 情報提供・影之兎チャモ



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