恐怖コラム
ナイフ
オギノという名の、風俗の呼び込みや使い走りをしている男がいた。彼は住み込みで働いていたのだが、機転があまり働かないために給料も少なかった。
ある日、店の金を数千円ほど使ってしまったのがばれてしまい、彼はリンチを受けることとなった。店の人間たちは彼を普段から虫けらのように扱っていたので、リンチをすることに何の疑問も抱かなかった。
まず彼らは彼の口にぼろきれをつっこみ、体をおさえつけて指の爪をニッパーではがしにかかった。
そのうち人が増え、ついに十人近い男女が加わった。
彼の両手の爪がなくなると、周りの人間の行動はどんどんエスカレートしていった。とめるものはいなかった。
一人がついに、錆びた折りたたみナイフが落ちているのをみつけ、彼の歯の隙間に勢いよくねじ込んだ。
まわりはそれをみて、笑う。
それから耳や頬を切り落とそうとしたのだが、錆びているためになかなか切れず、仕方なくちぎるように殺ぎ落とした。
ついに血だらけになり反応も薄くなった彼に対し、周囲の誰かが「今度はかつらを作るぞ」と火をくべた。錆びたナイフが彼の頭皮に突き刺さる。
そのときまた彼は意識を取り戻し、絶叫した。悲鳴をあげる彼に彼らはダンボールをかぶせ、放置した。
虫の息の彼は彼らが立ち去ると、裏路地から這い出て、反対側の道路にでたところを新聞配達員に発見された。
すぐに病院に運ばれて一命をとりとめたものの、彼の顔は無残にも肉の塊と化していて、耳も口もつかえなくなっていた。悲惨なリンチは彼の精神までも破壊し、彼は病院を抜け出し、失踪。
それから彼、オギノの姿を見るものはいなかった。
だかしかし、リンチにかかわったものもその後、なぜか電車に飛び込んだり、首吊りをするなど次々と狂っていった。また行方不明になったものもいた。
行方不明になる前に女の一人が友人への電話に残した言葉は、「家に帰ってきたらベランダに人がいる。こっちを見て口を大きく開けて絶叫している」という奇妙なものであった。
その後、リンチの現場では肉のついた爪や歯、頭皮や、そしてあの錆びついたナイフが転がっていたという。
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