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恐怖コラム
源頼朝の復讐
 源頼朝と聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべるだろう。

 壇ノ浦の戦い? イイクニつくろう鎌倉幕府? 教科書は極めて記号的な歴史しか語らないから、彼がどのような男であったか知る者は意外と少ない。彼は、自分の地位を脅かしそうな者は幼子でも根絶やしにする男であった。

 壇ノ浦の戦いに勝利した頼朝はまず、平家の血筋や家臣や兵を皆殺しにした。そして次に弟、叔父と自分の親類まで手にかけていく。まさに徹底的な男だ。

 何が彼をそこまでさせたのだろう。

 頼朝には復讐を心に誓った相手がいた。長田忠到である。彼は平家に追いつめられていた頼朝の父を、敵からかくまうフリをして騙し打った。頼朝が苦境に立たされたのはいうまでもない。

 時は流れ、頼朝は兵をあげて長田を追いつめた。すると卑怯にも長田は手のひらを返すように寝返った。しかし頼朝はそれを承諾。快く受け入れられた。
 愚かな長田は気づいていただろうか。それが頼朝の思惑の布石であると。

 ある日、頼朝はちょっとした過失を口実に長田父子を捕らえさせると、頼朝の父である義朝の墓前に引き立てた。
 頼朝が口を開く。
「主君殺しがどれほどの罪か思い知らせてやろう」
 この台詞が合図となった。

 役人達は地面に板を敷くと更に竹竿を置き、二人を押さえつけ大の字に寝かせ、両足を縛り付けた。そして鉄釘をもつと手を両足をそれで打ちつけた。
 血が弾け、肉がちぎれ、骨が割れ。
 耳を押さえたくなるような叫びが響く中、許しを乞う父子に頼朝は言い放つ。
「すぐには死なせない。苦しみ続けろ」

 打ちつけられた二人が悶絶しながら次に見上げたのは刀を握る男たち。彼らは一寸きざみで刀を振り下ろすと、父子の肉を少しずつ削ってゆく。
 呻きと絶叫があがり、あたりが血にそまる。「早く殺してくれ」という訴えを無視して、男達は続けた。
 鼻をうがつ。 耳を削ぐ。 目を抉る。
 人間と判別できない血肉の塊と化し、断末魔をあげる力さえ失った父子を更に切る。切る切る切る。
 頼朝はそれを凝視し続ける。

 残虐非道な男、頼朝。彼はもしかしたら父の死で他人を信用しない人間となったのかもしれない。戦国の世、徹底的なその性格が彼を歴史の高みへと導いたのは確かだ。彼は父の復讐を遂げた五年後、壇ノ浦で一族の復讐をも遂げることになる。
 血の海で数時間生き続けた長田父子の死体を踏み台にして。


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あきゅろす。
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