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恐怖コラム
カメラがとらえたもの
 フリーのカメラマンの奇妙な話だ。

 彼は会社の命令で「なにがなんでもスクープを撮って来い」といわれ、不機嫌になりながらも街へと飛び出した。
 ぶらぶら歩いてみるも、スクープなど簡単に落ちているはずもない。無茶をいうものだと、どんどん気分がめいってきたところ、ふいにビルの上になにかがいるのに気がついた。

 女性だった。女性は、いままさに飛び降りんという体制でビルの端に突っ立っていた。

「スクープだ」
 カメラマンは反射的にカメラを構えた。瞬間、女性の体が空中に踊り出る。無我夢中でとる。ものすごいスピードで落下する女性になんとか焦点を当てながら、カメラマンは写真をとった。
 グシャリ。
 女性の飛び降り写真をとることに成功した。
 しかし、どうにも気分が悪い。
 カメラマンは何度も凄惨な事故現場に足を踏み入れたことがあり、慣れているはずだ。なのに妙な悪寒がある。
 次第に気分は悪化し、野次馬が集まりだした頃には、カメラマンはきびすを返していた。

 会社へと戻り、カメラマンは早速同僚にプリントアウトを頼んだ。出来上がった写真は迫力があったのだろう、同僚はプリントアウトを終えた写真を片手に「洒落にならない」と呟いた。
「そんなにすごかったのか?」
「ああ。これは使えないよ」

 なんだって? カメラマンは目をしばたいた。きちんとフレームにおさめたはずなのになぜ使えない?
 カメラマンは写真を受け取ると、すぐに目を通した。そして三枚目の写真で……。
「ひいいいいいい!」
 彼は悲鳴をあげると、逃げるように編集室から出て行った。
 それからというもの、カメラマンの姿を見たものはいない。

 写真には確かに、女性がはっきりと写っていた。
 飛び降りる瞬間は逆光で顔が見えない。だか二枚目の写真は驚愕するものだった。
 地面すれすれの女の顔が、こちらを凝視している。死の間際の人間がすることにしては、あまりにも異常である。そして三枚目。
 女の顔は半分地面にめり込み、砕けていた。そして彼女は……冷笑を浮かべていた。

 新聞にも掲載された実話である。
 

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あきゅろす。
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