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恐怖コラム
無情の出産
 ある新人助産婦の話。彼女は何度目かに、驚くべき出産を目にした。頭に角のような突起があり、赤黒いというより紫に近い肌をした赤ん坊が生まれてきたのだ。

 赤ん坊は泣き声も出さずにじぃっと助産婦を凝視した。あまりの出来事に助産婦が立ちすくんでいると、つぃとベテラン助産婦が注射器を持ってきて赤ん坊に注射した。とたんに赤ん坊は痙攣し、がくりと体の力を落とした。

 母親には遺体も見せずに処理された数日後、思い切って新人助産婦は尋ねた。
「どうしてあんなことを?」
 ベテラン助産婦は憤る新人助産婦に悲しそうな目を投げると、
「ああいう子が生まれた場合はこうすることが決まりなの。そのほうが、誰も傷つかなくてすむのよ……」
 早々と仕事場に戻ってしまったという。




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あきゅろす。
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