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恐怖コラム
チャイ屋にて
 インドにはチャイという伝統的な飲み物がある。インドに旅行に来たものとして、飲むのは当然だろう。そう彼は思い、チャイ屋に足を運んだ。
 古くさい店内は薄暗く、妙なにおいがした。別のチャイ屋に行こうかと迷ったが暑くてすっかり参っていたこともあり、彼は妥協を選んだ。

 注文すると、店内に似合わず美しいサリーを着た老女とともにチャイが出てきた。喉が乾いていた。彼は待望のチャイをつかむと、一気に飲み干す。
 そこで彼の意識は、細い糸のようにちぎれた。

 次に目をさますと、個人病院にいた。
「気がつきましたか。あなたは路上で倒れていたんですよ」
 医師の言葉に呆然としていると、ふいに腹部から痛みが走る。見ると、腹に大きな縫い跡が出来ていた。
「お気の毒に。強盗に刺されたんですよ」
 ゾッとした彼は、退院するとすぐに帰国し、念のために国立の病院で診察してもらうことにした。
 随分と乱暴な治療だったからな……、彼はのんびりとそんなことを思っていた。しかし診察の結果は、驚くべきものだった。

「腎臓が片方ありませんが、どうされたんですか?」



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