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恐怖コラム
『ウラノスとクロノス』
 親子には時に因縁がある。特に父と息子というものは、憎みあう傾向が強いのだという。一体いつから親子は、憎みあうようになってしまったのだろう。
 ……分からない。
 分からないが、ギリシアの原初の神たちは、かなり早い段階で親子間の憎悪というものをもっていたようだ。

 ウラノス(天空)は、母なるガイアの独断によって生まれた。ウラノスは母と交じりあうと(ギリシア神話では近親相姦は当たり前のように描かれている)、けして死なない神を作った。
 その中に異形の子たちもいたのだが、ウラノスは彼らを忌み嫌い、生まれてまもなく冥府へと封じ込めてしまった。

 これに怒ったガイアは鉄の釜を作った。そして末息子のクロノス(時)が立ち上がり、その鎌を手にした。父ウラノスの不意をつくと、彼は父のペニスを鎌で切り落とす。父ウラノスの力と権威の失墜し、息子クロノスが天地の支配権を握った瞬間であった。
 神の頂点に立ったクロノスであるが、彼はウラノスから「お前もまた自分の子どもによって権力を奪われる」と予言した。そのことに怯えたクロノスは、なんと生まれてくる子どもたちを次々呑み込み始めた。

 これは主神ゼウスが生まれる前のことである。つまりオリュンポスの神の時代が前に、親子間(ただし神)の憎悪は始まっていた。ついには、自分の子を食べてしまうという結果を招いた。
 そしてウラノスの孫にあたるゼウスもまた、父であるクロノスに憎悪の炎を燃やし、見事に権力を奪った。親子間の憎みあいと奪い合いは、繰り返されたのである。

 父と子はいつから醜い争いをするようになったのだろう。子はいつか父を越えるというが……。
 少なくともギリシア神話が生まれた前から、それはあったようだ。

情報提供・影之兎チャモ

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