恐怖コラム
眠らない方法
冬の、夜のことだった。登山サークルのメンバー四人が、雪の降り乱れる山道を一心不乱に登っていた。遭難してしまったのだ。
山裾に降りると余計に迷ってしまい、捜索されることも難しくなってしまうと知っていた彼らは、白く染まった道なき道をずんずんと登り、一軒の山小屋を見つけた。
命からがら転がり込み、ホッとしたのもつかの間。吹雪をさえぎる壁はあっても、暖をとれそうなものがなにもない。
外と変わらない気温はマイナスをさしているようだった。そしてなにより、彼らは雪のせいでぐっしょりと濡れていた。このまま小屋で眠ったら最後、凍死してしまうことは確実に思われた。
寒さによる眠気はあまりにも強かった。
眠らないためにどうすればいいだろうか、そのように思案を巡らせていると、四角いだけの部屋を見つめていたメンバーの一人が声をあげた。
「そうだ、走ればいいんだ」
彼の提案とは……。
まずの部屋の四隅に一人ずつ立つ。次に一人が壁沿いに角まで走り、隅にいるもう一人にタッチする。
タッチされた物は、隅にいるもう一人にタッチする……つまり、部屋の隅から隅を順番ずつ、リレー方式で走るという計画だ。
これを繰り返すことで、眠らないし、体を温めることもできる。
全員一致で提案に賛成すると、彼らはこの運動を日が昇るまで続けた。
翌日の朝、ついに彼らは捜索隊によって救助され、一命を取り留めたのだった。
学校に戻った彼らは、このことを友人に報告した。
が、話を聞いた友人は、首を傾げてみせた。
「それって、おかしくないか?」
そして友人は一枚の紙に運動の図を書いた。
「ほら、よくみろよ。四隅に立って運動を始めるだろう。一人、二人、三人、四人。……するとさ、四人目が走っていった角には、誰もいないだろ」
友人の図と説明を聞いて、メンバーたちはゾッとした。そう、四人だけでは一周もせずに運動が終わってしまうのだ。
だがあの時、運動は一度も止まることがなかったはずだ。
「お前ら、誰と走ってたんだよ」
背後でカタリと、なにかが音をたてた。
情報提供・影之兎チャモ
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