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恐怖コラム
お母さんのお守り
 貧しい母子家庭があった。母と娘は互いに手を取り合い、慎ましくも幸せに暮らしていた。

 母は懸命に働き、娘はその恩を返すように勉強と家事に専念した。食事も食べられない日も少なくはなかったが、母は勉強だけは娘に不自由させまいと働き続けた。
 二人の努力によって、娘は大学受験を受けることとなった。
 大学受験の当日。貧しくてお守りも買えない娘に、母親は手作りのお守りを手渡した。

「頑張るのよ。これはお母さんからのお守り。絶対開けちゃ駄目よ、お守りは開けたら効力がなくなってしまうんだから」
 母の言葉にしっかりと頷き、娘はお守りを握り締めました。娘の努力が実ったのか、母の祈りが届いたのか、難関国立大学に合格。

 そしてその後も勉強を怠ることなく、娘は無事に就職した。給料の良い仕事により、ようやく生活が豊かになった頃、娘は母親に海外旅行をプレゼントした。

「楽しんできてね!」
「お土産買ってくるから」

 幸せな見送り。
 が、それが娘が母を見た最後となった。旅行の途中で母は、不慮の事故によりなくなってしまったからだ。
 これから今までの苦労を払拭するくらい、親孝行をしようと思っていたのに……娘は呆然とした。
「形見さえないなんて」
 そう呟いた瞬間、娘は思い出した。大学受験の日に貰ったお守り。あれが形見じゃないか。

 娘はそう思い、お守りを握り締めた。そして悲しみの中、母がどんな気持ちをお守りに託したのかが知りたくなり、お守りを解いてみた。
 中には、一枚の紙切れが。そこには、娘に対する母の強いメッセージが残されていた……。

『お前なんかいなければもっと楽な生活が送れるのに。お前なんか死んでしまえばいいのに。シネシネシネシネシネシネシネ……』

 娘は戦慄した。

「……お前が死んだら、娘はもっと幸せになるのに」

 貧しさに対する怒りと悲しみ、そして愛情と憎悪。その中で苦しみながら死んでいった母親。
 娘はお守りを戻すと、号泣した。

情報提供・影之兎チャモ



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