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恐怖コラム
小谷田勝五郎
 江戸時代の国学者・平田篤胤(あつたね)が、ある奇妙な男の話を残している小谷田勝五郎。この男、科学では解明できないある記憶を持っていた。

 江戸時代、中野村にいる源蔵の息子として勝五郎は生まれた。
 そしてそれが起こったのは、勝五郎が八つになったある夜のことだった。一緒に眠っている祖母に、このような話をし始めた。
「おれの本当の名前は藤蔵なんだよ」
 そして更に、このように述べたという。
「昔は程久保村に住んでいた」
「父親の名前は久兵で母親の名前はおしずという」
「でも父親はおれが生まれてすぐ死んだ」
「おれもすぐ死んだ」
「だからこの家の母親のお腹に入って、また生まれてきたんだ」

 まさに輪廻転生。この奇妙な話だけでなく、勝五郎は死後の世界のことまで語った。
 最初は半信半疑だった祖母もその話があまりにも具体的であったことから、村の集まりの際に村人たちに語ることにした。

 その結果、十五年前の程久保村の状況と酷似することが分かった。程久保村の人間が噂を聞きつけて勝五郎の元へやってきたのだが、話は更に信憑性を帯びていった。

 行ったことのない、そもそも名前さえ何故知っているかも分からない程久保村のことを、勝五郎は詳しく答えた。そればかりか、昔の自分だと豪語した藤蔵は本当に存在した。そして藤蔵の家の様子までさらりと答えた。
 驚いた村人たちは勝五郎を程久保村へつれていった。すると勝五郎は、藤蔵が死んでから変化した町並みについては「こうではなかった、こういうものだった」と、ずばり言い当てたという。

 藤蔵は文化四年二月四日に、勝五郎は明治二年十二月四日になくなった。この二人の墓は、今でも残っている。

 小谷田勝五郎。彼は本当に、輪廻転生をしたのだろうか?

情報提供・影之兎チャモ



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