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夢幻ノ薄桜






棗は気配を消して、浪士達の後を付けていった。

彼らを追ってわかったことがある。そう、そのまさかだったのだ。彼女の直感は当たっていた。

彼らが追いかけていたのは、やはり棗にぶつかった少年だったのだ。

         ・
(どうして、あんな娘が追われているの…?)


元々身体能力が高い棗は徐々に彼らとの差を詰めていく。

しかし普段なら人間同士の諍いなどを気にすることはないのだか、この時は違った。なぜか少年を放っておく気にはなれなかったのだ。

自分と似たような気配を感じたからだろうか。

しかも浪士達はすぐにでも斬りかかりそうな剣幕だった。

少年が何をしたのかも気になるところだが、斬り合いになるというのなら、止めなくてはならない。

どうみてもあんな少年一人で怒り狂った浪士三人を迎え撃つのには無理があるはずだ。


…もし棗の直感が外れていれば、の話だが。


どのくらい走ったのだろうか。そろそろ浪士達に体力の限界が近づいたらしく、走る速度が落ちていった時だった。

「くそっ、どこに行きやがった!!」

「すばしっこいガキだ!!」

浪士達は足を止めた。そしてようやく三人は手分けしてあちこちを捜し始める。

そろそろ手分けして捜した方が効率が良いのではないか、と棗は彼らに助言してしまいそうになっていた。


「お前はあっちをっ…!!」

「あぁ…、わかった。」

焦っている様子を見ると、どうやら少年を見失ったようだ。つまりもう彼らは当てにできないということだ。

ここまで執着するのもどうかと思うが…。

(自分で捜すしかないですね…)

はぁ、とまた溜め息をつき、棗は再び少年を捜しはじめた。






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