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リップの味


「・・・んで、山名さん今日は何の用っすか?
超かわいい俺にデートのお誘いしに来たとかでしたら喜んで行くっすよ?」
「んなわけねーだろ。いっちょ前に色気づいてんじゃねーよ糞ガキ」
「いやいや、俺も冗談っすよ。本気にしないでくださいよ」

敬語は強要されているが俺たちの仲は至って良好で、これくらいの軽口を言い合う仲だ。

「・・・実はな、お前がまだあったことねーっていう505号室のやつの話なんだが」
「え、何かあったんすか?」

山名さんの顔がいたく真剣であったので恐る恐る尋ねた。
何だろうか。酷く嫌な予感がする・・・



「・・・実はよぉ、お前に会いてぇって言ってやがんだが・・・」
「え、まじっすか!!」

何だそんなことか。
・・・でも、だったらどうして山名さんは、そんなことだけでこんな表情をするんだ?

というか、同じマンションの住人なのだから山名さんに相談せずとも俺の部屋のチャイムを鳴らせばいいだけの話であるにもかかわらず、一体どうして山名さんからこの話が俺に来たんだ?


「・・・悪い、お前の女装癖のこと漏らしちまったんだ」






一瞬思考が停止した








「・・・はぁ?」




とにかく、俺の口から出せたのはその一言だった。





「ははは・・・あー・・・い、いや、わりぃな。
あいつなら軽蔑しねぇって分かってたからついポロっとな」

「あんたまじっすか。女装姿でこのマンション内の男どもを誑かしてやろうっていう俺の密かな計画丸潰れじゃないっすか」
「はぁ?なんだそれ」
「505号室の人にいつ会えるかって楽しみにしてたのに!!あんたは知らないでしょうけどね!!俺、じわじわとこのマンション内の住人誑かしてる最中なんっすよ!!?そんでまだ会った事ないやつは残すところあと一人・・・そう、505号室だけだったのに!!あんた馬鹿か!!」
「いやいやいや、わけわかんねえよ。何お前ホモだったのか?いや、引きはしねぇけど色々とびっくりなんだけど何考えてんだおまえ」
「ああああ俺の計画があああああ」
「ていうか俺の事も落とすつもりだったのか?」
「あ、それはないんで安心してください」
「・・・」


あれ?何で山名さん顔が死んでるんだ?

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