リップの味
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503号室、笹倉 優成(ササクラ ユウセイ)
ドアの前に掲げられた母親の作ったやや右下がりの文字の掛かれた表札は俺の部屋だという証だ。
昨年、父親の転勤とかで両親がどっかの国だか県だかに行く際に他人に貸したマイホームを出て、俺が今住むのは何十年も前に建てられたというところこどころ壁がはがれていたりするようなボロマンションだ。
両親にはもっと綺麗な場所にすればいいと言われたが無理を言って地元に残っている身としてはそこまで迷惑をかけるつもりなんて更々なかった。
・・・そして、俺がこの地に残るのはとある事情があっての事だ。
別に大事な彼女がいるから・・・というわけじゃない。
転勤をする事実が告げられた時はちょうど彼女と別れた頃だった。
ただ、俺にはあまり人には言えない趣味・・・というべきか悪趣というべきなのか、
俺は女装が好きだった。
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