小さなお話たち 桜の呪い どうやら僕の学校には『中庭の一番大きな桜の木の下で告白すると結ばれる』というジンクスがあるらしい。 それを知ったのは入学して数日経った日だった。 所詮はジンクスだ・・・と馬鹿にしていたのもそれから1ヶ月程だった。 と、いうのも、二つ隣のクラスの地味でどちらかというと不細工な男子生徒が学年でも人気ランキング1、2を争うほどの美少女にそのジンクスを試して成功したからである。 ・・・勿論それだけではなかったが長くなるので割愛させていただくことにする。 その男子生徒にもとても失礼な話であるだろうが、このジンクスの威力は入学してから半年たった今では『呪い 』と言われる程だ。 しかし、この半年の間で1つ分かったことがある。 誰かが仲の良い先輩に聞いたとかで、 『人に見られてはいけない』というルールのようなモノがあるらしい。 その先輩によると、昔、元々付き合っていたカップルと、その彼氏側の少年の親友の三人である実験を行ったらしい。 なんでも、カップルがジンクスを試し、二人の仲をより確かなものにするという行為を親友である少年の見ている中で行うという実験であった。 ・・・その結果、仲の良かったカップルは別れて彼女側の少女が彼氏側の少年の親友と付き合うことになったのだ。 つまり、この『人に見られてはいけない』というルールは 『見られた人と結ばれる』という意味を孕んでいたというわけだ。 その事実を次の日には当然のように全校生徒が知っていて、 いつのまにか『このジンクスを行なっている時には中庭に近寄ってはならない』『このジンクスを行なう者は中庭の入り口に学校指定のブレザーを置いておく』というものが出来たのだという。 そのおかげか、実験を行った三人組以降は失敗例がないらしく、一週間に一度は中庭の入り口のベンチに、かけてあるブレザーを見るほどであった。 ・・・そして僕もこの『ジンクス』を実践しようとする内の一人である。 ・・・僕の場合は『ジンクス』・・・いや、『呪い』の力でも借りないと恐らく叶うはずのない恋なのである。 [*前へ][次へ#] [戻る] |