小さなお話たち
傘 2
「そう言えばお前は傘持ってきてるのかよ」
「おー。持ってきてるよ」
「お、まじかじゃあ・・・」
と、そこまで言ったところで担任が入って来てHRが始まり友人は椅子に座りなおす。
担任の連絡事項を聞き流しながらやや曲がった猫背の友人の背を見ながらHRが終わったら帰りに相合傘をしてくれないか頼んでみよう。と思っていた
「女子か」なんて言われるかもしれないな・・・なんて思ってたらいつの間にやらHRは終わり、また友人はこっちを振り向いた
「さっきの話の続き、帰り俺も一緒に傘に入れてくんね?」
「え?いや、別にいいけど・・・お前はいいのかよ。」
「何がだよ」
「・・・ほら、相合傘ってさ、か、カップルみてえじゃん。」
なぜそこで顔を赤らめる。
「・・・俺は別にいいけど。お前がいやなら無理強いはしねえから気にすんな」
「嫌じゃねーよ。お前の家、俺の帰り道の途中にあるし」
「さんきゅー。じゃ、もしお前が暇だったら俺んち寄ってかね?今日親いねーし」
「え、お、おう。じゃあ、ちょっとだけ寄ってく」
「そっか。んじゃ帰るか」
鞄を持ち教室から出る。
それからたわいもない話をしながら階段を降り、下足室で靴を履き替えてると友人が真っ黒い傘を持ち
「靴履き替えるのおせぇな」
なんて、言いながらこっちへ歩いてきた
「うっせーよ」
と、それだけを返して足の爪先で地面をトントンと二回ずつ蹴り歩き出した。
下足室を出ると友人が傘を開きこちらを手招いてきたので
「おじゃましまーす」
なんていって傘の中に入る
黒い傘は思っていたよりも大きく、身長が平均より少し高いくらいの俺たちが入ってもギリギリ大丈夫と言う感じだった。
人通りが少なく、時々車が1、2台通るくらいの一方通行の寂しい道で歩く俺達は孤独で傘の中の俺達は窮屈だった。
友人との会話の間、雨の音が俺にそんなことを考えさせていた。
でも、この窮屈さは割りと好きだ
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