ボクがヒーロー 1 「神崎佐久人が亡くなった」という情報がボクらの元まで届くのに、少し時間がかかった。 こんなご時世だ。反荒神勢力のボクらにとって、こういった情報のやり取りも結構大変だったりする。 ボクが暮らしているこの家は、イヴァン、という男の子が暮らしている。 彼は例の「神崎佐久人」と恋仲にあった、らしい。 ボクはそこんところは詳しく聞いていない。 けれど、「それ」を聞いてからの彼の様子を見るに、とても大切な人だったということは、ボクの目からでも分かった。 外に出なくなった。 ご飯を食べなくなった。 眠らなくなった。 日に日にやつれていく。 部屋の隅で、写真立てを両手に大切そうに持ちながら、ごめんなさい、と繰り返しているのだ。 ボクはほとほと呆れ果てた。 全く困った野郎だな、なんて、前までは知りもしなかった汚い言葉を呟いてみる。 大切な人を失って、それでそのまま燻る気でいるのだろうか。呆れてものも言えない。 そうしてボクはまた今日も、食べる人のいない料理を作る。 [次へ#] |