小説
1
序章
いつもテニスをしている姿が好きだった。
いつも真っ向勝負なところが好きだった。
いつもうざい位構ってくれるところが、そんな君が好きだった。
倒れたときに君は言っていたね。
「俺には、このチームにはお前がいないといけんのだ!ゆきむらぁー」
と。
その、「俺には」ってどうゆう意味だったの?
ただのチームメイトとして?
それとも・・・
---春、満開の桜。
俺は病院の病室でそれを窓越しに見ていた。
きれいな桜は風に舞い、やがて散り行く。
そんな風に、俺もテニスから散ってゆくのかな・・・。
なんて考えていた頃。
ガラッッ
真田:おーい、幸村?いるのか?入るぞ!
開いたドアから顔を出す君。
いつものように笑いながら、でも今日はなんか違ってる。
幸村:あ、真田・・・ってあれ?部活は?
真田:あ、の、え〜・・・とそれはだな・・・えと・・・
幸村:あ〜サボったんだ。
人には「たるんどる(声、顔真似)」なんていっといて〜・・・柳に言っちゃお
真田:えっ!!お、お願いだ、それだけはやめてくれ!!!!
っと、忘れそうになってたが・・・お前にプレゼントがあるんだ。
幸村:もう〜・・・じゃ、今回だけねww
で、プレゼントって??
すると真田はずっと背中に隠してた手を差し出した。
手の中にあったのは桜の枝。
きれいな花が悠々しく咲いていた。
真田:あの、お前花が好きだろ?
病室のなかと本物とじゃまた違うと思ってな。
少しはにかんでいる君は桜の花の色に頬を染めてとても素敵だったよ?
桜なんかとは比べ物にならないほどに・・・。
幸村:ありがとう。
さっき丁度桜を眺めていたんだ。
目を細めて桜を受け取った。
知ってたかい?真田。
実は桜って枝を折ってはいけないんだよ。そこから菌が入って桜が枯れてしまうんだ。
だから、それはみんなで眺めるものなんだ。
でも、君がくれた桜は俺だけの桜なんだ。
俺だけの・・・。
俺のこの気持ちが動き出していたのはこのときからではなかったような気がする。
でもね、真田。
確かな鼓動を感じたのは、君の暖かさに気持ちが軽くなったのを感じたのは
これがはじめて自覚したときだったんだ。
まだ全然本当の感情なんかには気づいていなかった、そんな季節。
春、それは俺の始まり
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