それが恋だから
駆けずり回るA
それから数日間、俺は都内・横浜あたりの大きな書店に電話をかけまくった。
…内容は勿論、北海さんが注文した本の在庫の有無。
しかし悲しいことに1冊も残っておらず、後に残ったのは膨大な携帯通話料金と枯れた声だけだった。
最終手段は、俺が自分で持ってるやつなんだけど…。
「はー…なんだかなぁ。さすがになー」
廊下の隅っこの階段裏で、自宅の本棚から鞄に入れて持ち歩いてるそれを取り出し、溜め息をついた。
購入したのはもう何年も前になる。
大事に保管してたから状態はいいけど、古本を売りつけるのは如何なものか。
かといって「タダであげます!読んで下さい」なんて頭おかしい奴だと思われるだろう。
でも…だけど…せっかく注文してくれたんだから。
ずっと倉庫に眠ってて古いから、無料でいいですって言ってみよう。
俺は意を決して、北海さんの番号を呼び出した。
――TRRR……
うう、緊張する。
3回のコールの後、呼び出し音が途切れた。
「………」
「………?」
ん?通じた…のか?
相手が何も言わないので、こちらも話し出すタイミングを失ってしまった。
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