それが恋だから
これは恋なのか@
――おっ、見てる見てる。
『よっしゃー!』
彼がその本を手にしてこちらへ向かってきたので、俺は声を出さずに叫んで、心の中でガッツポーズをつくった。
…俺がお薦めPOPを書いた、大好きな本。
この本屋でバイトし始めて、初めてカウンターに本を置いたその彼を見たとき。
悪いけど、最初の印象は「こういう人でも文芸書なんて読むんだ…」っていう、失礼極まりないものだった。
だってその見た目といったら、銀色の髪の凄い美形で長身、黒い細身のダブルのスーツにパイソンブーツっていう、いかにも「夜の人」だったから。
…いや、スーツなんて会社員の男性なら誰でも着てるだろう。
でも彼だと…なんというか、こう、いかがわしい雰囲気が漂っているというか。
まぁとにかくその日から、この本屋に来る度につい目で追うようになってしまった彼の本の趣味は、俺と非常に似ている。
…だけど、ちょっと惜しかった。
このジャンルなら、あの作品の方が感動できるのにとかリアルなのにとか、レジ打ちしながらいつも心の中で突っ込んでいた。
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