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君だけでいい


「さっきの子はどうしたんですか?」

「あー。放ってきたから知らない」

「彼女、いるくせに…」

「………」


なぜか止まらない。
逆にこっちが殴られてもしょうがないような、そんな反抗的な態度。


「おまえに、俺を責める権利はまだないよ?」


――責めてる?俺が?


弾かれたように顔を上げると、いかにも面白がってるような瞳と目が合う。


「嫉妬してるでしょ」

「そっ!んな…こと…」


俺の混乱した思考に、余裕の表情で答えをくれる。

嫉妬…なのかな?
このやり場のない怒りと苛立ちは。


「俺のこと気になってるでしょ」

「う…はい」

「俺のこと好きでしょ」


ゆっくりと頬に伸びて来た手に、顔を上向かされる。

傷痕だらけだけど、リストでも軽々と弾きこなせそうな、男らしい節の太い長い指。


「それはまだ…よくわかりません」

「ずっりーの」


笑いを含んだ吐息が唇にかかって…軽い口づけが降りてきた。



――完敗だった。





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