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君だけでいい


それからは、一瞬の出来事だった。


飛び出した仁志は勢いのまま真正面の1人に飛び蹴りし、振り向きざまに隣の男の顎に鋭く左の肘を入れた。
そして流れを途切れさせずに、鞭のようにしなる後ろ回し蹴りを残りの男の鳩尾に決める。

まるで相手にならない。

その姿は無駄な動きがひとつも無く、まるでダンスでも踊ってるみたいに綺麗で…俺は目を奪われていた。

3人の男は一撃のうちにのされてしまった。
さっきのが余程痛かったのか、未だに右手を押さえ呻いていた男は、慌てて逃げようとしていた。

しかし仁志はそれ以上興味を示さずに、軽蔑した眼差しで男をちらっと見やって、乱れた髪を整える。


「だめじゃん、途中であきらめちゃー」


――お礼を言わなきゃ。


「…なんで来たんですか?」


助けてくれたんだから。


「えっ。だって危なくなかった?」


でも、俯いた俺の唇から滑り出た言葉は険を含んだ憎まれ口で。

相手にとっても予想外の反応だったのか、きょとんとした顔をしてる。





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