君だけでいい
◇
――仁志 拓海だ。
清純そうで、綺麗な黒髪をした同年代くらいの女の子を隣に連れて歩いていた。そして、角を曲がって向かった先にあるのは…ホテル街。
俺は思わず裏通りの奥に逃げ込んでしまった。
「ふーん、そっか」
いるんじゃん、彼女。
しかも日曜の昼間っからラブホって。
なんか…悩んで損した。
俺の貴重な数日間を返せ!
「ちぃーす」
しばらくそうして壁に貼り付いていたら、軽薄そうな声とともに横から肩を叩かれる。
「あ?」
イライラした気分のままに、刺々しい声が口をついて出てしまった。
振り向くと、いかにも悪っそーな、下品なスウェット上下の格好の男…と、その後ろにしゃがみこんでるお仲間3人。
「あん?なんだその態度はぁ」
…はぁ、そういえばここは大通りから死角だった。
哲史に一人で歩くなって言われたっけな。
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