君だけでいい
◇
そのとき、陽介の俺を睨んでいた目が怪訝そうに揺れた。
「なんか顔赤くね?」
近づいて、首を両手で包み込まれる。
「え?」
「…熱がある」
なるほど、道理で頭痛がするわけだ。
原因がわかった途端、なんだかだるさと寒気まで押し寄せてきて、目の前のガラステーブルにおでこを乗せて撃沈した。
「冷たくて気持ちいい」
「ちょ!布団で寝ろって」
焦った口調で陽介は屈んで俺の腹に腕を差し入れ、片手で軽々と引っ張り上げた。
そして――
「ぎゃー!歩ける、歩けるから!」
横抱き、いわゆるお姫様抱っこをされてしまった。
陽介は俺の抵抗を無視してそのまま大股で歩いてベッドまで移動し、片足で乱暴に掛け布団を押し退けて俺をゆっくりと寝かせた。
そして、クローゼットから厚手のパジャマを俺に放って着替えるように言いつけて、物凄い勢いで家から飛び出して行く。
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