君だけでいい
◇
げ、陽介。
部屋に入ってきたのに全然気づかなかったよ…
「お…かえり…」
なんとなく布団を被ったまま答える。
「なんか、うちの学校の前にマサキちゃんのチャリ置きっぱだったんだけど」
「ああっ!」
すっかり忘れてた。
取りに行かないとパクられるか移動されるかも。
慌ててベッドから滑り降りて、突っ立っている陽介の横をすり抜けてドアに向かおうとした。
「鍵かかってたから担いで来た」
…持ってきてくれたのか。
「ありがと。重かったろ」
なんだか脱力してしまって、その場にへたり込む。
「別に。あと、てっしーがコレ返しといてって」
陽介は、左手人差し指に弁当袋の取っ手を引っ掛けて、くるくる回している。
「伝言。すごく美味かったですごちそうさまでした」
棒読み。
あっ、やば…。
「俺に持ってきたんじゃねーのかよ」
明らかにふて腐れた顔。
「あはは、これには色々と事情が…えーと…てっしー他に何か言ってた?」
「何かって何だよ」
どこをどう説明しよう?
なんか一気に色々あって…どっと疲れてクラクラしてきた。
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