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君だけでいい


げ、陽介。

部屋に入ってきたのに全然気づかなかったよ…


「お…かえり…」


なんとなく布団を被ったまま答える。


「なんか、うちの学校の前にマサキちゃんのチャリ置きっぱだったんだけど」

「ああっ!」


すっかり忘れてた。
取りに行かないとパクられるか移動されるかも。


慌ててベッドから滑り降りて、突っ立っている陽介の横をすり抜けてドアに向かおうとした。


「鍵かかってたから担いで来た」


…持ってきてくれたのか。


「ありがと。重かったろ」


なんだか脱力してしまって、その場にへたり込む。


「別に。あと、てっしーがコレ返しといてって」


陽介は、左手人差し指に弁当袋の取っ手を引っ掛けて、くるくる回している。


「伝言。すごく美味かったですごちそうさまでした」


棒読み。
あっ、やば…。


「俺に持ってきたんじゃねーのかよ」


明らかにふて腐れた顔。


「あはは、これには色々と事情が…えーと…てっしー他に何か言ってた?」

「何かって何だよ」


どこをどう説明しよう?
なんか一気に色々あって…どっと疲れてクラクラしてきた。





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