君だけでいい
◇
「やめてよー。ただでさえマサキちゃん顔売れてんだからさぁ」
「…へっ?俺?」
なぜ!?初耳だ。
中学時代、哲史は絡まれやすい陽介につき合って自ら喧嘩に参加していたし、成績がわりと良かったのに創成に進むと宣言した陽介に、面白そうだからとついていった。
だからこの二人なら話はわかるが。
喧嘩の場面に遭遇しても、痛いのは嫌だからいつも少し離れて傍観してて、高校も電車+バス乗り継ぎで1時間以上かかる進学校に進んだこの俺が…?
数々の出来事を思い返して原因を探ろうと黙りこんだ俺に、哲史は頬を掻きながら言いにくそうに教えてくれた。
「あー…葵 陽介と小田桐哲史を従わせる総司令?みたいな?」
「は?何だそれ」
「マサキちゃん俺らの喧嘩始まるとき、逃げないで近くで見てるじゃん。いっつも腕組んで壁にもたれたりして、偉っそーに指示出ししたりしてさ」
「うん?」
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