君だけでいい 幼なじみ 「てっしー!」 全力ダッシュをして一団の前で急ブレーキをかけ、名前を呼んだ。 よく見慣れた切れ長で少しつり目な顔が、びっくりした様子で俺を見上げる。 やっぱり哲史だった。 まずはひと安心。 でもこの中に陽介はいないみたいだ。 ざっと見回して確認した後、怖そうな皆様が呆気にとられてフリーズしているうちに、哲史の袖を引っ張って立たせようとした。 その直前。 「ちょ…マサキちゃん!なにやってんの!」 慌てふためいた哲史に逆に手首を強く引かれ、今来た道を逆ダッシュさせられた。 手をとられたまま校門を過ぎ、学校の門の横の角を曲がって裏道に引っ張り込まれる。 「何だよー手首痛い。大事な手を乱暴に扱うなよー」 「マサキちゃん、駄目じゃん!中まで入ってきたら」 哲史はようやく俺の手を離して、両膝に手を当てて荒い息をついた。 煙草を吸うせいか、体力あっても持久力ないなぁ。 「あーごめん。ちょっと用事あってさ」 とりあえずえへっと笑ってみる。 その反応に、哲史は疲れきった顔をしてその場に座り込んだ。 [*back][next#] [戻る] |