君だけでいい
◇
「はぁ………」
甘えすぎた。
我ながら馬鹿な発言をしてしまった。
小さい子供じゃあるまいし…。
薬が効いてくるまで気を紛らそうと、入院中読みかけだった文庫本を探して鞄を漁っていたらドアが大きく開かれた。
無言で部屋に入ってきた陽介は枕をベッドに置いて布団に潜り、右半分スペースを開ける。
「えっ。いいの?」
「ああ」
「ごめん」
「今度から謝ったら罰金」
「……うん」
俺が右隣にもそもそ潜り込むと、ベッド際に置いていたリモコンで電気を消した。
「あ、暗いとちょっと…」
「大丈夫だ」
やけにはっきり断言すると、こっちを向いて俺の手に気を使いながら、片腕で俺の頭を抱え込んだ。
「ちょ………」
これってちょっと、腕枕チックな…っ!
「文句禁止」
「う…わかった」
――人とくっつくのが嫌だから拒んだんじゃないのかよ!
しょうがなく心の中でツッコミを入れた。
でも…これはこれで。
暖かいし(ていうか、暑い)耳のすぐ横で規則正しい心音が聞こえてきて、なんだか安心する。
何年ぶりだろう?
こうして一緒のベッドで眠るのは。
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