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君だけでいい
眠れぬ夜


その日の夜…俺は中々寝つくことが出来なかった。


新しい家のせいじゃなく、いつもと違うベッドのせいでもない。

電気を消して真っ暗になると、あのときのむっとした熱気とコンクリートの床の冷たい感触、骨の砕ける音と衝撃が頭に甦る。

…そして目を閉じると、仁志さんの冷めた瞳が俺をじっと見下ろしてくる。


入院中もずっとそうだった。

努力してやっと眠りに入れたとしても、それらは夢の中にまで侵食してくる。


だから今、灯りをこうこうと点けた中で一生懸命寝ようとしてるんだけど、元々部屋が明るいと寝られない質だ。
しかも今じゃ、暗くても眠れない。


「……はぁ。眠剤飲も」


俺は観念して起き上がり、水を取りにキッチンに向かった。


病院で処方してもらっていた軽めの睡眠薬。
最後は1シートしかくれなかったから、あまり無駄遣いはしたくなかったけど。


少し開け放した部屋から漏れる明かりでリビングの様子をみると、陽介はシングルの布団でタオルケット一枚だけ被り、腹に大きな猫を乗せて(乗られて?)眠っていた。





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あきゅろす。
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